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医学物理士認定試験問題にチャレンジ!

こんにちは!

今回は医学物理士認定試験について紹介したいと思います。

紹介と言っておきながらなんですが、私は一度も受けたことはありません!

ですので、「医学物理士とは何ぞや」「認定試験の詳しい形式を知りたい」、「認定の手順を知りたい」という方にはあまり参考にならないかもしれません。

私自身、国試の勉強に飽きてしまい興味本位で解いてみただけなので、この記事では一体どのような問題が出題されるのかに焦点を当てていきます!


医学物理士認定試験とは?

まず、どのような試験かについて簡単にまとめます。

医学物理士認定試験では、

 ・記述式 物理工学系

 ・多肢選択式 物理工学系

 ・多肢選択式 医学生物系

の3つの試験形式があります。

各出題方式の科目と難易度について簡単に整理していきます。


記述式 物理工学系

記述式物理工学系では、以下の5科目から出題されます。

 放射線診断物理学

 核医学物理学

 放射線治療物理学

 放射線計測学

 ・保健物理学/放射線防護学

これら5科目各2問から3科目各1問を選択して解くことになります。

記述式は毎年度異なる問題が出題されており、あまり過去問演習の意義はないように感じました。

ほとんど解いていないのでサラっと見た感じでは、難易度もなかなか高く、よく知っている内容でなんとか完答できる位のレベルだと思いました。

治療では内容は易しめですが、急に英文が出題されたりなど、出題傾向が読みづらいです。


多肢選択式 物理工学系

多肢選択式物理工学系では、以下の9科目から出題されます。

 放射線物理学

 統計学

 ・保健物理学/放射線防護学

 放射線診断物理学

 核医学物理学

 放射線治療物理学

 放射線計測学

 ・医療・画像情報学

 放射線関連法規および勧告/医療倫理

放射線物理学が15問、統計学が5問、それ以外が各10問の計90問です。

難易度についてはそれぞれ後ほど少し詳しく書きますが、全体的に診療放射線技師国家試験より少し難しく、+αで勉強しなければならない分野もいくつかあります。

しかし、記述式と異なり同じ問題や類題が度々出題されているので過去問演習が有効だと感じました。


多肢選択式 医学生物系

多肢選択式医学生物系では、以下の5科目から出題されます。

 基礎医学

 放射線診断学

 核医学

 放射線腫瘍学

 放射線生物学

基礎医学が20問、それ以外が各10問の計60問です。

難易度は放射線診断学放射線腫瘍学に関しては追加で勉強する必要がありそうですが、他の科目は診療放射線技師国家試験レベルで十分だと感じました。


解答が無料では公開されていないので、実際にどの程度解けているのかわかりませんが、大体このような感じだと思います。

放射線技術系ではない方からするとまた違った感想になるのかもしれません。

それではこれら3つの出題形式の中から、多肢選択式物理工学系について実際の問題を示しながら詳しく見ていきます。


実際の出題(多肢選択式物理工学系)

各形式の過去問は医学物理士認定機構のホームページで公開されています。

URL:医学物理士認定試験 | 一般財団法人 医学物理士認定機構

2017年度、2018年度の問題から各科目1問ずつ見ていきます。


放射線物理学

2017年度問題1です。

(2017年度医学物理士認定試験より引用)

量子力学についての出題です。

理工系の方からすると簡単なのかもしれませんが、放射線技術系(少なくとも私)からすると「???」という感じだと思います。(違ったらすいません)

放射線物理学の教科書には書いてあるのかもしれませんが、少なくとも国試の過去問ではみた覚えがありません。

調べてみたところ、1次元調和振動子のエネルギー固有値

 E_n = \left(n + {\frac{1}{2}} \right) \hbar \omega

で表され、第1励起状態(n = 1)のとき、

 E_n = {\frac{3}{2}} \hbar \omega

となるため、解答はcのようです。

なぜそうなるのか気になり、調べてみましたが沼にハマりそうだったので後回しにしてはや数ヶ月です笑

これ以外にも電磁気学解析力学相対論など基礎物理学の出題が厄介だと感じました。

ですが、基本的には放射線技師の国試と類似した出題が多いと思います。


統計学

2018年度問題16です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

統計学の基礎的な問題ですが、これもまた放射線技師の国試には出題されていないので追加の勉強が必要かと思います。

統計学が1つの科目として追加されたのはここ数年のようで、問題の蓄積がないのでなんとも言えませんが基本的な内容を問うものが多いようです。

解答は以下のようになると思います。

確率密度関数f(x)の平均値\mu 、分散\sigma ^2は以下の式で求められる。

 \mu = \int_{-\infty}^{\infty} x f(x) dx

 \sigma ^2 = \int_{-\infty}^{\infty} {(x-\mu)} ^2 f(x) dx

与えられたf(x)について計算すると、

 \mu = \int_{0}^{\infty} x e ^{-x} dx = 1

 \sigma ^2 = \int_{0}^{\infty} {(x - 1)} ^2 e ^{-x} dx = 1

実際の計算過程は部分積分が必要だったりして、なかなか面倒くさいですが、一応このように求められます。

(指数分布の期待値と分散として公式的にも求まるんですかね?)


保健物理学/放射線防護学

2018年度問題29です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

基本的には国試と同程度の難易度ですが、時々聞いたことがないものについての出題があります。

この問題では緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information:SPEEDI)について問われています。

SPEEDI自体聞いたことがなかったので「???」となりました。

意識しないと勉強しない分野だと思うので、国試に出ない内容についても情報収集しておくと良い気がします。

解答としては以下のようになります。

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information:SPEEDI)は原子力発電所などから大量の放射性物質が放出されたり、その恐れがあるという緊急事態に、周辺環境における放射性物質の大気中濃度および被ばく線量など環境への影響を、放出源情報、気象条件および地形データを基に迅速に予測するシステムである。

d)食品中の放射性物質濃度は計算しない。

解答はdになります。


放射線診断物理学

2018年度問題35です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

放射線診断物理学も国試とほぼ同じようなレベルの問題が多いように感じました。

この問題も国試ではあまり見ない問題ですが、出題されていてもおかしくない問題だと思います。

解答としては以下のようになります。

胸部CT画像は主に軟部組織、リンパ節、血管などの評価を行うための縦隔条件と気管、気管支、肺内血管、肺野などの評価を行うための肺野条件の2つがある。

それぞれのWWとWLは、

縦隔条件 WW:300~400程度、WL:0~40程度

肺野条件 WW:1000~1500程度、WL:-500~-700程度

であるためc、dが正しいと考えられます。


核医学物理学

2018年度問題50です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

核医学物理学は基本的に国試と同等か少し難しいレベルだと思いますが、この問題のようにあまり馴染みのない内容が出題されることもあるようです。

コンプトンカメラの原理については長くなるので省略しますが、解答は以下のようになると思います。

a)光学的レンズは使用しない。

b)光子の飛来方向を推定できるため、物理コリメータを必要としない。

c)X線CT装置よりは空間分解能は低い。

d)ARM(Anglular Resolution Measure)は角度分解能の指標であり、コンプトンカメラに特有の空間分解能指標である。

e)正しい。

よってe)が正しいと考えられます。


放射線治療物理学

2018年度問題58です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

放射線治療物理学は確実に一番難しいと思います。

医学物理士の多くが治療分野に従事しているので当たり前と言えば当たり前かもしれません。

まだそこまで広く認知されていない概念なども出題されているような気がします。

この問題のTCPも国試では見たことがありませんし、授業でも聞いた覚えがありません(聞き逃しているだけかもしれませんが)。

知識のアップデートが最も必要になる科目だと思いました。

一番自信がありませんが、解答は以下のようになると思います。

a)正しい。

b)腫瘍に対して均一な線量を仮定する

c)通常分割照射の方が寡分割照射より大きい。

d)放射線治療後に細胞が全て死滅する場合,TCPは100%となるためその値は1である。

e)1回線量dの照射後における平均生存腫瘍細胞数Nは、

  N = N_0 e ^{-\alpha d - \beta d ^2}

で表される。

n回照射を行った場合、平均生存腫瘍細胞数Nは、

  N = N_0 e ^{-n(\alpha d + \beta d ^2)}

    = N_0 e ^{-nd(\alpha + \beta d)}

    = N_0 e ^{-\alpha D \left(1 + {\frac{d}{\alpha / \beta}} \right)}

で表される。

一般に腫瘍のα/βは大きい(10Gy程度)であるため、2Gyの分割照射では生存腫瘍細胞数はN_0 e ^{-\alpha D}で近似される。

よって解答はaになると考えられます。


放射線計測学

2017年問題65です。

(2017年度医学物理士認定試験より引用)

放射線計測学は全体的には解きやすいですが、度々専門的な問題が出題されているという感じでした。

この問題も見た時は「知るか!」と思いました笑

導出を書くと長くなるので省略しますが、解答は以下のようになると思います。

中心電極の半径がa、空洞内壁の半径がbである円筒形のガス入り計数管に電圧Vを印加したとき、空洞内で中心電極の表面から半径方向rの点での電界強度E(r)は、

 E(r) = {\frac{V}{r \ln (b/a)}}

で表される。

よって解答はeになります。


医療・画像情報学

2018年度問題71です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

医療・画像情報学は国試に出題されない内容が多く、新たに勉強する必要があると思います。

ネットワークやDICOM、人工知能などの問題も少し国試よりレベルが高いように感じました。

この問題もエントロピー(平均情報量)についての問題であり、情報理論で学ぶ概念です。

簡単にですが、解答は以下のようになると思います。

ある事象Eの生起確率をP(E)とするとき、その事象が起こったことを伝える情報量I(E)は、

 I(E) = -\log_2 P(E)

と表され、エントロピー(平均情報量)H(P)は、

 H(P) = \sum_{k=1} ^n \{ P(E_k) \times I(E_k) \}

で求められる。

排反する2つの事象をそれぞれE_1E_2とし、それぞれの生起確率をP_1P_2とすると、エントロピーH(P)は、

 H(P) = P(E_1) \times I(E_1) + P(E_2) \times I(E_2)

    =0.4 \times (-\log_2 0.4) + 0.6 \times (-\log_2 0.6)

    =0.4 \times 1.3 + 0.6 \times 0.7

    =0.94

となるため、解答はdになります。


放射線関連法規および勧告/医療倫理

2018年問題90です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

放射線関連法規および勧告については国試と同レベルです。

医療倫理についても国試でもたびたび出題されているので、少し自分でまとめて勉強すれば大丈夫そうだと思いました。

この問題はハインリッヒの法則についての問題です。

今年の国試から出題基準に医療安全管理学が追加されたので、今後出題されるかもしれませんね。

解答は以下のようになります。

ハインリッヒの法則」とは1つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり、さらにその背景には300のインシデント(事故に至らなかった事例)が存在するという統計的な経験則である。

よって解答はeになります。


どうでしょうか?

なかなかヤバイな…」と思いますよね笑

少し難しい問題や追加で勉強が必要だと思った問題を選んでいるので、問題全体を見ればもう少しやる気が起きるかもしれません。

私も実際に受けるか分かりませんが、結構勉強になることもあるので勉強はしてみようかなと思っています。

自分ではもう少し詳しい解説を作ったりしているのですが、今回は長くなりすぎないように簡単な解説のようなものも書いてみました。

少しでも参考になれば幸いです。

何か誤りなどありましたら、ぜひ教えてください!

ではまた!

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