「高電圧発生装置」を理解する③
こんにちは!
今回はついにインバータ式装置です!
ここまで長々と高電圧装置について説明してきましたが、現在実際に使われているのはほとんどこのインバータ式装置です。
少し記事が長くなりましたが、最後まで読んでみてください!
まずは、インバータ式装置の基本について見ていきます!
インバータ式装置の基本
インバータ式装置の目的
インバータ式装置では①商用電源(交流)を直流に変換した後、②インバータを用いて高周波の方形波交流電圧を出力します。
まず、なぜこのような過程が必要なのでしょうか?
これを理解するためにはさらに基本に立ち返る必要があります。
「高電圧発生装置」を理解する①を読んでいただいた方は分かると思いますが、高電圧装置が目標とするのは「供給電圧の安定性」でした。
三相交流では位相をずらした商用電源(交流)の組合せによりリプル百分率を小さくしていましたが、インバータ式装置では先程の①、②の過程で高周波の交流電圧を作り出し、整流することで三相12ピーク形装置よりリプル百分率を小さくしています。
「ん?ちょっと待てよ?直流に変換したならそのまま使えばいいんじゃね?」
と思った方はよく考えられていると思います(偉そうですいません笑)
リプルを小さくしたいだけなら直流に変換できればいいのですが、高電圧発生装置にはほかにもポイントがありましたよね。
それは、高電圧を発生させるための変圧です。
変圧器を用いて変圧する場合には、交流が必要になります。
このためにわざわざ交流→直流→交流という過程をたどっているわけですね。
理解できたでしょうか?
では、続いてインバータの原理について簡単にまとめます。
インバータの原理
インバータ自体はそんなに難しいものではありません。
回路としては以下のようなものです。
Trはトランジスタの略であり、スイッチング素子です。
詳しくは説明しませんが、電流を通したり通さなかったりする半導体というやつです。
インバータでは直流→交流の変換を行うので、電源は直流です。
まず、Tr1とTr3が開通し、Tr2とTr4が閉鎖している場合、電流は回路の①の向きに流れます。
次に、Tr2とTr4が開通し、Tr1とTr3が閉鎖している場合、電流は回路の②の向きに流れます。
このスイッチングを繰り返すことで、直流から交流を作り出すことができます。
そんなに難しくないですよね。
では、非共振形と共振形それぞれの原理について見ていきましょう。
非共振形インバータ式装置の原理
非共振形インバータ式装置では大まかに以下のような流れで高電圧を発生させています。
回路をみても読む気がなくなりそうなので、概念図のみとしました。
(決して回路図をつくるのが面倒くさかったわけではありません…決して笑)
気になる方は教科書を見れば書いてあると思うのでチェックしてください。
では1つずつ見ていきます。
AC-DCコンバータ
ACは交流、DCは直流を示しています。
コンバータは変換を示す言葉なので、交流を直流に変換する機構ということですね。
これは先ほどインバータ式装置の基本で説明した商用交流を直流に変換する過程にあたります。
原理としては、まず商用交流(三相交流)に対して整流を行います。
前回までの記事を読んでもらえればわかると思いますが、整流を行っただけでは脈動が大きく直流とは言いにくいです。
このため、波形を平滑にするためのコンデンサが回路に組み込まれています。
これによりある程度脈動が抑えられた疑似的な直流が完成します。
DC-DCコンバータ
このDC-DCコンバータが非共振形インバータ式装置において重要になります。
後程まとめて説明しますが、ここが共振形インバータ式装置との大きな違いになります。
DC(直流)-DC(直流)コンバータですから直流→直流に変換する機構です。
この過程は1次電圧を調整するために必要になります。
変圧器の変圧比が固定とすると、管電圧を調整する際に1次電圧を調整するしかありません。
DC-DCコンバータではチョッパ回路と平滑化フィルタ回路を用いて1次電圧を調整しています。
チョッパ回路はいわゆるスイッチング回路です。
AC-DCコンバータからの出力(直流)に対してスイッチングを行うと以下のようになります。
このスイッチングにおいて、開通時間を調整し、平滑フィルタ回路を通すことで電圧全体を調節することができます。
1周期当りのスイッチONの時間の比がデューティ比と呼ばれるものです。
以下の図で簡単に説明します。
なんとなく理解できると思いますが、デューティ比が大きいほど、平滑したときの電圧が大きくなります。
かなり理想的な話ですが、平滑化前後で波形の面積が等しくなると考えればよいと思います。
このような形で1次電圧が調整されました。
インバータ回路
インバータ回路は先ほど説明した通りですね。
電圧を調整された直流をスイッチングにより交流に変換します。
スイッチング素子が非常に高速・高精度のため、高周波の交流電圧を出力できます。
変圧器、整流器
ここからは前回までの高電圧装置とほぼ同様ですね。
変圧器により昇圧を行い、さらに整流を行うことでリプル百分率をかなり小さくした電圧を出力します。
だいたいこんな感じです。
では、共振形インバータ式装置について見ていきます。
共振形インバータ式装置の原理
共振形インバータ式装置では大まかに以下のような流れで高電圧を発生させています。
非共振形と同じく、概念図のみとしました。
非共振形と同じ部分もかなり多いので、異なる部分のみ説明していきます。
共振回路
共振形と名前についていますから、もちろん共振回路が含まれています。
非共振形ではDC-DCコンバータを用いて1次電圧の調整をしていましたが、共振形では共振回路を用いて1次電圧の調整を行います。
共振回路については、以前の国試の難問⑤の記事を読んでいただければと思います。
簡単に説明すると、交流の周波数によりインピーダンスが変化し、流れる電流が変化するというものです。
以下の図に示すように、共振周波数に近づけていくほど電流は大きくなり、それ以上になるとまた小さくなっていくという特性を示します。
つまり、インバータ回路によって周波数を調整すれば1次電流を調整できるため、結果的に1次電圧を調整することになります。
細かい違いはあるのかもしれませんが、大きく異なるのはこの共振回路のみです。
DC-DCコンバータの代わりに共振回路が入っていると思えばいいのではないでしょうか。
まとめ
インバータ式装置についてはだいたいこんな感じでいいと思います。
教科書を読めばもっとたくさん書いてありますが、基本はこの程度です。
国試では他にインバータ式装置の特性なども出題されますが、この原理が分かっていれば理解できるものがほとんどなので原理をしっかり理解しておくとよいと思います。
何か誤りなどありましたら教えてください。
ではまた!