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最速?!第72回国試問題解説③(第72回診療放射線技師国家試験午前4)

こんにちは!

今回は放射化学溶媒抽出法に関する問題です。

問題は午前4です。

4 溶媒抽出法で抽出率を求める式はどれか。

ただし、分配比(=有機相中の放射性核種の全濃度/水相中の放射性核種の全濃度)をD有機相の体積をV_0、水相の体積をV_wとする。


  1.D / (D + V_o / V_w)

  2.D / (D + V_w / V_o)

  3.D \cdot (1 / D + V_o / V_w)

  4.D \cdot (1 / D + V_w / V_o)

  5.D / (D + 1 / (V_w \cdot V_o) )


溶媒抽出法の抽出率はもちろん教科書(オーム社放射線技術学シリーズ)に書いてあるだろうと思ったのですが、定義は書いてあるものの分配比を用いた式は書いてありませんでした(見逃していたらすみません)。

見覚えがあったのは放射線取扱主任者のときに勉強をしたからでしょうか?

まぁ、そんなことはどうでもいいのですが、どちらにしろ私はこういった式を丸暗記するのが嫌いです笑

丸暗記というのは式の意味を考えず、そのまま見た目で覚えるという意味です。

この抽出率の導出は大した計算でもないので、個人的には定義を覚えてそのたびに導出する方がいいと思います。

ではまず、溶媒抽出法から復習していきましょう。


溶媒抽出法

溶媒抽出法は放射性核種の分離法の一つです。

水溶液(水相)に溶解している目的の放射性核種と他の共存核種から、目的の放射性核種のみを有機溶媒(有機相)に抽出して分離・精製するものですね。

こうはいったものの目的の放射性核種が完全に有機相に抽出できるわけではなく、ある程度時間を置くと平衡に達し、一定の比に落ち着きます。

これが分配比です。

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ここで確認しておくべきはこの分配比が水相・有機相それぞれの放射性核種の濃度で定義されていることです。

覚えておきましょう。

では、続いて抽出率の定義を確認していきます。

抽出率Eは、水相の放射能A_w有機相の放射能A_0とすると、

 E = {\frac{A_0}{A_w + A_0}} \times 100

と定義されています。

こちらは水相および有機相の放射能をもとに定義されています。

これで基本の復習は完了です。

では、式を導出して問題を解いていきましょう。


問題の解説

まずは、分配比から考えます。

先程復習した通り、分配比は水相・有機相それぞれの放射性核種の濃度でした。

濃度というとモル濃度が一般的かと思いますが、放射性核種なので放射能測定から濃度が分かる方がいいですよね。

放射能の式は、

 A = \lambda N = \lambda \left({\frac{m}{M}}\right) N_A

と変形でき、式の中にモル(m/Mが含まれるので放射能濃度としても大丈夫そうですね。

よって、分配比Dは、

 D = {\frac{A_0 / V_0}{A_w / V_w}}

と表せます。

では、抽出率を導出していきます。

先程確認した通り、抽出率Eの定義は、

 E = {\frac{A_0}{A_w + A_0}} \times 100

でした。

この式を式変形していきます。

方針としては分配比Dが式の中に出てくるように変形するので、

 E = {\frac{A_0}{A_w + A_0}} \times 100

  = {\frac{A_0 \times {\frac{1 / V_0}{A_w / V_w}}}{(A_w + A_0) \times {\frac{1 / V_0}{A_w / V_w}}}} \times 100

  = {\frac{D}{D + {\frac{V_w}{V_0}}}} \times 100

ということで、解答はになります。

人によっては「こっちの方がややこしい、覚えた方が楽!」という方もおられると思いますが、導出の過程を理解しておくと覚えることが少なくなるので一度試してみる価値はあると思います。

今回の問題は難易度はそう高くなかったと思いますが、何か誤りなどありましたら教えてください。

ではまた!