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最速?!第72回国試問題解説④(第72回診療放射線技師国家試験午前8)

こんにちは!

今回は診療画像機器学インバータ式X線装置に関する問題です。

問題は午前8です。

8 共振形インバータ式X線装置で正しいのはどれか。


  1.並列共振形は大容量X線装置に適している。

  2.大負荷になるほどインバータ周波数が高くなる。

  3.スイッチング時の電力損失は非共振形より大きい。

  4.直列共振形は負荷抵抗が大きいほど電流の変化が大きい。

  5.並列共振形は負荷抵抗が小さいほど共振現象を利用しやすい。


どうでしょうか?

インバータについてそこそこ分かっている方でも戸惑う問題だと思います。

まず、選択肢の意味がよく分からない笑

正答を選べた人もなんとなく合ってるっぽいぐらいの感覚だと思います。

今回は各選択肢について、その基礎となる知識を確認しながら解いていきます。

かなり重めですが、気になる人はぜひ最後まで読んでみてください。


問題の解説

選択肢を大きく分けると、

14 → 直列共振と並列共振

2 → インバータ周波数

3 → スイッチング損失

と分けられます。

それぞれについて見ていきましょう。


直列共振と並列共振

共振についてはなんとなく理解している方が多いと思います。

よく分からない方は以下の記事をご覧ください。

yuruyurudokugaku.hatenablog.jp

共振回路は抵抗、コンデンサ、コイルの接続方式によって直列共振並列共振に分けられます。

まずは、直列共振から見ていきます。

直列RLC回路のインピーダンスZは、

 Z = R + j \left(\omega L - {\frac{1}{\omega C}}\right)

と表せます。

共振状態ではインピーダンスZが最小になるため、

 \omega L - {\frac{1}{\omega C}} = 0

となり、この時共振周波数f_0は、

 \omega_0 = {\frac{1}{\sqrt{LC}}}

 f_0 = {\frac{1}{2 \pi \sqrt{LC}}}

となります。

共振形インバータ式装置ではこの周波数(インバータ周波数)を変えることで出力の調整をしています。

では、次に並列共振を見ていきます。

先程と同様にインピーダンスZを求めようとすると少しややこしい式になるので、多くの場合インピーダンスの逆数であるアドミタンスYを用います。

並列共振回路のアドミタンスYは、

 Y = {\frac{1}{R}} + j \left(\omega C - {\frac{1}{\omega L}}\right)

となります。

共振状態ではこのアドミタンスYが最小となるため、

 \omega C - {\frac{1}{\omega L}} = 0

となり、共振周波数は直列共振と等しくなります。

少し注意が必要なのは、並列共振ではアドミタンス最小となることです。

アドミタンスインピーダンスの逆数であり、電流の流れやすさを示すものですから、並列共振の時流れる電流は最小になります。

基本はこの程度です。


では、各選択肢を見ていきます。

1.並列共振形は大容量X線装置に適している。

早速「そんなの知るか!」という感じの選択肢ですね笑

これは直列共振並列共振それぞれの共振特性を理解している必要があります。

後程他の選択肢でも出てくるのですが、「共振特性を利用しやすい」とは、共振曲線の尖鋭度(Q値)が大きいことを示しています。

ではここで、直列共振のインピーダンスの式を見てみましょう。

 Z = R + j \left(\omega L - {\frac{1}{\omega C}}\right)

Rが小さいほどZが小さくなるため、Rが小さいほど共振特性を利用しやすいということになります。

Rが小さいということは電流を大きくすることができ、大容量X線装置に適していると考えられます。

次に並列共振のアドミタンスの式を見ると、

 Y = {\frac{1}{R}} + j \left(\omega C - {\frac{1}{\omega L}}\right)

並列共振ではRが大きい方がYが小さくなるため、Rが大きいほど共振特性を利用しやすいということになります。

訂正:上図に誤りがあります。正しくは

   R 小 → Q 小 R大 → Q大 

Rを大きくすると電流に制限がかかるため、大容量X線装置に適しているとは言えません。

ということで、この選択肢は誤りになります。

1つ目からなかなかわかりにくい選択肢ですが、これが分かれば後の2つは簡単です。

4.直列共振形は負荷抵抗が大きいほど電流の変化が大きい。

5.並列共振形は負荷抵抗が小さいほど共振現象を利用しやすい。

これらは先ほど書いた通り、直列共振は抵抗が小さいほど、並列共振は抵抗が大きいほど共振現象を利用しやすいため誤りと分かります。

では、次に行きましょう。


インバータ周波数

インバータ周波数とはインバータによるスイッチングの周波数です。

ここでは2の選択肢について考えます。

2.大負荷になるほどインバータ周波数が高くなる。

これは主に共振形インバータ装置のことだと思いますが、大負荷、つまり大管電流の場合にインバータ周波数がどうなるか問われています。

共振特性のグラフを見てもらえば分かると思いますが、共振形インバータ式装置ではインバータ周波数を高くする(共振周波数に近づける)ことで電流を大きくできます。

この単純な理由からもこの選択肢が正しいことを判断できると思いますが、もう少し考えてみましょう。

インバータ回路を通して交流となった電流はコンデンサなどの平滑化回路を通ることで最終的な管電圧波形となります。

この平滑化回路は電流が大きくなると、その平滑効果が小さくなってしまいます。

つまりリプル百分率が大きくなってしまうということです。

しかし、先ほども言ったように共振形インバータでは電流を大きくするためにインバータ周波数を高くする必要があるので、リプル百分率を小さく抑えることができます。

この点でもやはり大負荷の場合にインバータ周波数は高くなると考えられるでしょう。

では、最後にスイッチング損失について押さえましょう。


スイッチング損失

まず、スイッチング損失について確認していきます。

インバータ装置などで行われるスイッチングには主に半導体素子が使われています。

このスイッチング素子がON(オン)のとき、半導体には電流が流れます

半導体にも内部抵抗があるので、電流が流れているときも素子の両端には電位差(電圧)がありますが、大きさは小さいものです。

逆にスイッチング素子がOFF(オフ)のとき、半導体には電流が流れません(正確には漏洩電流がありますが)。

電流が流れないので素子の両端にかかる電圧が大きくなります。

では、スイッチングを行ったその瞬間には流れる電流素子の両端にかかる電圧はどうなっているでしょうか。

理想的にはスイッチングは方形波(矩形波で行われますが、実際には完全にオン・オフになるために少し時間がかかります

図で示すと、

このようにスイッチングの瞬間には流れる電流素子の両端電圧両方が高くなってしまいます。

この電圧・電流によって生じる熱損失スイッチング損失です。

スイッチング損失はスイッチングにかかる時間が長く、スイッチングの周波数が高いほどこの損失が大きくなってしまいます。

スイッチング損失について簡単に理解したところで問題の選択肢を見ていきます。

3.スイッチング時の電力損失は非共振形より大きい。

共振形非共振形でスイッチング損失を比較する必要がありますね。

当たり前ですが、共振形と非共振形の大きな違いは共振回路が含まれているかどうかです。

この共振回路に含まれるコンデンサやコイルなどによりスイッチがオン状態になった瞬間には電流がほとんど流れません

これによりスイッチング時の損失が少ないという特徴があります。

よってこの選択肢は誤りとなります。


まとめ

インバータ式装置についての問題でしたが、選択肢に関する内容だけを抜粋して解説したので少し分かりにくかったかもしれません。

もう少し基礎から理解したいという方は以下の記事をご覧ください。

yuruyurudokugaku.hatenablog.jp

何か誤りがありましたら教えてください。

ではまた!