国試の難問?②(第70回診療放射線技師国家試験午前80)
こんにちは!
今回は第70回午前80を解いていきます!
(第70回診療放射線技師国家試験より引用)
この問題は一見簡単そうに見えますが、統計学の理解や問題を自分で補って解く必要があるので意外と難しいです。
では、頑張りましょう!
統計学の基礎
前提として必要となる統計学の基礎からまとめていきます。
放射性物質の放射性崩壊(放射能)はランダムなバラつきをもち、ポアソン分布に従います。
また、平均値が大きくなるとポアソン分布は正規分布で近似することができます。
このため母集団をポアソン分布および正規分布として話を進めます。
ここでポアソン分布の重要な性質を確認しておきます。
ポアソン分布では分散と平均値が等しい、すなわち標準偏差は平均値の平方根になります。
図で示すとこのような感じです。
これはいろいろなところで出てくるので覚えておきましょう。
では、正規分布についていくつか統計量を求めていきましょう。
平均値、分散の正規分布からN個の標本()を取り出した場合、
その平均値(標本平均)は、
分散(不偏分散)は、
という式で示され、それぞれ母集団の推定量として使用されます。
(不偏分散についての詳細は省略します)
後々重要になるので強調しておきますがこの分散(標準偏差)は「標本のバラつき」を示します。覚えておいてください。
次に標本をN個抽出し、その標本平均を求めるという作業を繰り返した場合、標本平均の分布を得ることができます。
この分布は平均値が、分散がの正規分布となります。
細かい証明は省きますが、標本平均の分布なので何となくバラつきが小さくなることはイメージできると思います。
標本は有限個ですから、標本平均は一定になることはなくバラつきを持つはずです。
つまり、このバラつきは「真の値に対する標本平均のバラつき」を示します。
この標準偏差は標準誤差と呼ばれます。
先程の分散との違いが分かるでしょうか。
少しややこしいので一度自分で納得するまで考えてみてください!
問題の解釈
では、問題を解いていきましょう。
まず、
ある放射性試料で同一の測定時間の計数をN回繰り返し、平均計数値はカウントであった。
と書かれています。
放射線計測では現象としてバラつきを持つ放射性崩壊を計測することになるため、その計測値もバラつきをもちます。
これは一般的な統計学でいうと、正規分布する母集団から標本を抽出するときと同じように考えられます。
よって、先程説明したように平均値は、
と求められるものです。
さて、次からが問題です。
この平均計数値の標準偏差はどれか。
ここでいう標準偏差とは先程説明したうちのどちらのことでしょう?
正解は後者の標本平均の分布の標準偏差(標準誤差)です!
問題で求められているのは計数値の標準偏差ではなく、平均計数値の標準偏差です。
つまり、N回の測定を行い平均計数値を得るという作業を繰り返した時の平均計数値の分布における標準偏差を求めるということです。
ここが理解できれば後は大したことありません笑
となり、標準誤差はで示されるため、平均計数値の標準偏差は
となるため、解答は5です。
1文目だけを読むと標本分布の標準偏差を聞かれているような気がしてしまうので1を選んでしまう人が多いかと思います。
私もご多分に漏れず1を選んでしまいました笑
なかなかややこしかったと思うので納得いくまで読み返してみてください。
何か誤りなどありましたら優しくご指摘ください。
ではまた!