医用工学特講 第1回:オペアンプの解き方(1)
こんにちは!
今回から恐らく苦手な方が多いであろう医用工学の特講を始めていきます。
医用工学は全科目の中で一番使いどころが分からないにもかかわらず、物理になじみのない人にとっては難解なことが多いと思います。
ということで、医用工学については完全に理解するというより問題を解くことを重視するので厳密でない部分が多々あると思いますが、少し目をつむっていただければと思います。
記念すべき(?)第1回ではオペアンプ問題の解き方についてまとめていきます。
1つの記事では少し長くなるので2、3回に分けて説明していきますね。
さて、オペアンプ(演算増幅器)の問題ですが国試の参考書などを見ると各回路について公式や回路の形で解説されていることが多いと思います。
それらの公式や回路の形を覚えることで解くことはできると思いますが、オペアンプを含む回路は反転増幅回路、非反転増幅回路、微分回路、積分回路、加算回路、減算回路…など、数が多く一つ一つ覚えるのは少し面倒く…大変ですよね笑
そこで、オペアンプを含む問題に共通する解き方をシェアしたいと思います。
必要となる基礎知識
今回必要となる知識は、
1.オペアンプの性質
2.オームの法則
のみです!
(コンデンサを含む回路の場合はもう1つ式が必要となりますが、次回説明します。)
1.オペアンプの性質
オペアンプの性質は教科書を見ればいくつかあると思いますが、今回必要となるのは以下の2つです。
①2つの入力端子の電位差は0(仮想的短絡:イマジナリーショート)
②入力インピーダンスが∞
少し意味が分からないかもしれませんが後程説明するので心配しないでください。
2.オームの法則
オームの法則は中学校でも習うのでほとんどの方が知っていると思いますが、一応確認しておきます。
:電圧、:電流、:抵抗
今回は基本的にこの式しか使いません!
では、標準的な反転増幅回路の過去問を解いていきましょう。
問題演習
問題は第70回午後77を解きます。
(第70回診療放射線技師国家試験より引用)
解き方の流れは以下の通りです。
(1)各点の電位を書き込む
(2)流れる電流Iを仮定し、式に示す
(3)電流から等式をつくる
(4)必要な値を代入し、求める値を計算する
まず(1)からやってみましょう。
(1)各点の電位を書き込む
こんな感じになります。
基本的には抵抗やオペアンプなどデバイスを挟まずつながっている部分は全て等電位(電位が同じ)です。
ポイントとしては、先ほど確認したオペアンプの性質①からオペアンプの2端子は仮想的短絡(イマジナリーショート)となっているため、電位差が0となることです。
電位を書き込み終わったところで(2)に移ります。
(2)流れる電流Iを仮定し、式に示す
まず、抵抗に流れる電流を仮定します。
ここでは各抵抗に流れる電流を式で示します。
具体的な値の代入は最後にする方が楽なのでとりあえず左の抵抗を、右の抵抗をとして式を処理します。
まずはから考えます。
という風に立式できます。
では、についても式を立てると
となります。
ここで少しポイントですが、電圧は高い方から低い方を引くように設定します。
これをしっかりやらないと反転か非反転か分からなくなってしまいます。
続いて(3)に移ります。
(3)電流から等式をつくる
ここでオペアンプの性質②よりオペアンプの入力インピーダンスが∞、すなわち電流は流れこまないと考えられるので抵抗とに流れる電流は同じと考えられます。
よって、
となります。
との比を変えることで増幅度を変えられるということですね。
(4)必要な値を代入し、求める値を計算する
忘れかけていましたが、問題では電圧利得(増幅度)が与えられており、そこから抵抗R[kΩ]を求めます。
電圧利得(増幅度)は、
で得られるため、それぞれ値を代入すると、
と求められます。
電圧利得(増幅度)の求め方も重要ですが、オペアンプを含む回路の入力電圧と出力電圧の比を求める過程の理解が重要です。
抵抗のみを含む回路であれば、ほぼこの解き方で求められると思うのでしっかり理解しましょう!
次回はコンデンサを含む回路についてまとめていきます。
ではまた!