国試の難問?③(第71回診療放射線技師国家試験午前93)
こんにちは!
今回取扱う問題は、第71回午前93です。
93 X線受像器の1画素当たりに検出される全光子数の50%が散乱光子の場合、散乱線の寄与による出力信号のSN比の損失割合に最も近いのはどれか。ただし、散乱線はPoisson〈ポアソン〉分布に従う付加雑音として検出されるものとする。
1.10%
2.25%
3.30%
4.50%
5.70%
(第71回診療放射線技師国家試験より引用)
今回の問題は計算が難しいというより、状況の理解が難しいという感じだと思います。
出題者の意図と異なる解釈をすると解答が合わなくなってしまいます。
特に「散乱線はPoisson〈ポアソン〉分布に従う付加雑音として検出されるものとする。」という部分ですかね笑
まずは、SNRの基本から見ていきましょう。
SNRの基本
ではまず、前提の知識から確認します。
X線の光子数は平均光子数を中心としたポアソン分布で示される揺らぎを持ちます。
ポアソン分布の詳細についてはカットしますが、重要な特徴として、
があります。
このことから平均光子数(信号)をqとしたとき、ノイズは√qで表されます。
したがって、散乱線の寄与を全く考慮しない場合、出力信号のSN比は、
qは画像形成に寄与する平均の光子数です。
例えば、q=100の場合は
といった感じで計算できますよね。
ここで注意すべきはノイズは全光子数の平方根となることです。
「あれ?さっき言ってなかった⁇」と思われる方もいるでしょう。
しかし、これは非常に重要なポイントです!
なぜならば、SN比の信号(S)は画像形成に寄与するかどうかによって変化しますが、ノイズ(N)は画像形成に寄与するかどうかにかかわらず全光子数に依存するからです。
これは後ほど重要となるので覚えておきましょう!
問題の解説
では、問題に戻ります。
先ほどは散乱線の寄与を全く考慮しませんでしたが、ここに散乱線の寄与を考慮するとどうなるでしょうか?
問題では1画素当たりに検出された全光子数の50%が散乱光子と設定されています。
散乱線の寄与を考慮しない場合に検出器に入射する光子数に加えて散乱光子が付加されると考えます。
散乱線の寄与を考慮しない場合に検出器に入射する光子数を100とした場合、散乱光子数も同じく100となるはずです。
状況が整理できました。では、SN比を求めましょう。
信号(S)は画像形成に寄与する光子数が該当します。
ここで先ほど確認した事項が重要となります!
散乱線の寄与を考慮しない場合の入射光子はすべて画像形成に寄与すると考えられますが、散乱光子は画像形成に全く寄与しないということです!
このため、信号(S)は光子数100となります。
続いて雑音(N)は前述した通り、全光子数の平方根となりため、全光子数200の平方根√200となります。
よって、この場合のSNRは
となります。
したがって、問題で問われているSN比の損失割合は、
となり、解答は3の30%であるとわかります。
これでとりあえずSNRの変化についての重要なポイントが理解できたかと思います。
では、最初の方で言っていた解答とは違った解釈についても考えていきましょう。
解答と異なる解釈
どこで解釈が異なるかと言うと、散乱線の付与です。
先程の解釈では一次線の光子数は変わらず、散乱線が付加されると考えています。
しかし、散乱線なしとありで全光子数が等しいと考えた場合SNRはどうなるでしょう?
全光子数が100個とすると、全光子数の50%が散乱線ですから、一次光子は50個、散乱光子は50個となります。
先程と同様にSNRは
よってSNRの損失割合は
となり、50%になってしまいます。
どっちの解釈が正しいのか検討してみましょう。
強度のX線が照射される場合、X線光子の行方はこのような感じに分かれます。
散乱線の寄与なしとありで同じ線量を照射すると考えます。
散乱線の寄与を全く考慮しない場合は理想的なグリッドを使用することで一次X線を損失することなく散乱X線を完全に除去し、一次X線のみが検出器に到達したと考えればよいかと思います。
散乱線の寄与を考慮する場合は上の図に従うと、先ほどと同線量の一次X線に加えて散乱X線が付与すると考えられます。
まぁもともと散乱線が全くないというあり得ない状況を仮定しているので、どちらが正しいかはビミョーですが、理論的には解答どおりの解釈が正しいようです。
何か誤りなどありましたら優しくご指摘ください。
ではまた!