Dual energy CT入門④
こんにちは!
今回でDual energy CT入門は最後になります。
最後はDual energy CTの臨床応用について書いていきます。
臨床応用といっても、私自身が臨床で実際に見た物ではなく、単に書籍などから仕入れた情報なのであくまでも参考までにお願いします。
さて、多くの書籍では部位ごとにこれに使える、あれに使えると書かれていますが、今回は部位ごとではなくもう少し大まかな用途を書いていきます。
細かい用途はたくさんありますが、大きく分けて4つの用途があります。
1.造影効果の向上
2.被ばく線量の低減(造影)
3.物質弁別
4.アーチファクト低減
第1回でも簡単には書きましたが、それぞれの項目について少し詳しく書いていきます。
1.造影効果の向上
造影効果の向上は以下の2パターンが考えられます。
①仮想単色X線画像の低keV画像
②ヨードマップ
それぞれ見ていきましょう。
①仮想単色X線画像の低keV画像
仮想単色X線画像については前回までの記事である程度書いてあるのでここでは省略します。
まだ読んでいない人はぜひ一度読んでみてください。
yuruyurudokugaku.hatenablog.jp
この仮想単色X線画像を用いて造影効果を高めるためには低keV画像が用いられます。
一般撮影などでもコントラストをつけたいときには低管電圧で撮影を行いますよね。
管電圧が低い領域では物質の減弱係数の差が大きくなる場合が多いため、低管電圧の撮影が用いられます。
ヨードの造影効果上昇は少し違うという意見も見かけましたが、基本的には同じように考えていいと思います。
おそらく画像全体のコントラストが向上することと、造影剤(ヨード)と軟組織のコントラストが向上することを分けて考えているということだとは思うのですが(違っていたらぜひ教えてください)。
以下に骨、軟組織(水)、ヨードそれぞれの質量減弱係数のエネルギー依存性を示します。
この図を見れば低管電圧でコントラストが向上することが想像できると思います。
これによりより細かい血管が見えたり、腫瘍などがより明確に見えたり、造影剤を減量できたりするわけです。
innavi net 画像とITの医療情報ポータルサイト
(https://www.innervision.co.jp/sp/ad/suite/canonmedical/sup201905/session2-1_ct1)
より引用
これに頼りすぎるのは良くないのかもしれませんが、血管系の造影でタイミングがうまく合わず、造影不足になった場合のリカバリーも効きそうですよね。
これが実用レベルになればなかなか有用な気がします。
②ヨードマップ
このヨードマップはどちらかというと物質弁別に含まれるのですが、これも造影効果を向上させるという意味では有効と考えられます。
簡潔にいうとヨードマップはその名の通り、ヨードの分布を示すものです。
カラースケールでヨードの量を示すアプリケーションもあり、より定量性の高い解析が可能になるようです。
他の高吸収物質との区別もつきやすくなります。
2.被ばく線量の低減(造影)
この被ばく線量の低減は造影を含む検査にのみ適応できるものです。
どういうことかというと、これまた物質弁別をうまく使用することで仮想非造影画像を作成可能になるということです。
造影検査を行う際、多くの場合造影前と造影後の2回の撮影が必要になります。
しかし、造影画像からヨードを除いた仮想的な非造影画像が作り出せるのであれば撮影が一回で済むというわけです。
(http://rad.med.keio.ac.jp/dx/study/cont07/)
より引用
ただこの仮想非造影画像はあくまで仮想的なものであり、本来の非造影画像と全く同じように扱えるわけではありません。
どこまで使えるのかは分かりませんが、症例によっては被ばく線量の低減に十分寄与できるような気がします!
3.物質弁別
この物質弁別ですが、先ほどまで見てきたように様々な使われ方をするようです。
例えば、
・ヨードと他の物質(石灰化、骨など)の弁別→ヨード密度画像、ヨードマップなど
・胆石、腎石、尿路結石などの主成分の解析→実効原子番号解析など
・肝臓の脂肪量の定量→脂肪密度画像など
と多様です。
CTではなかなか難しかった物質の弁別により、MRIでしか出来なかった検査の代替が可能となる部分もあるようです。
ただMRIと違い、結果的に被ばくを伴うことになるので、その目的のみでの検査というのは難しいかもしれないですね(撮影時間的にはCT に軍配が上がる場合もあるかもしれませんが)。
この物質弁別はまだまだたくさんの用途が考えられており、とても面白そうですね。
4.アーチファクトの低減
第1回の記事でも少し書きましたが、仮想単色X線画像を用いることで、ビームハードニングアーチファクト、ひいては金属アーチファクトの補正が可能となります。
この仕組みは各社それぞれで異なることと、入門にしては少しややこしく記事が長くなってしまうので少し省略しながら説明していきます。
ビームハードニングはCTで使用するX線が連続スペクトルを持つ連続X線であるために生じます。
投影方向や高吸収の構造物などによって画像再構成時に矛盾が生じアーチファクトを発生するというわけです。
これはDual energy撮影における高管電圧・低管電圧撮影においても同じです。
上式は2つの基準物質(水とヨード)を仮定した式であり、高管電圧撮影と低管電圧撮影それぞれの投影データを示しています。
それぞれのエネルギーが単一であれば質量減弱係数も一意に定まるため問題は生じないのですが、連続エネルギーの場合、質量減弱係数はX線のパス上で一定になりません。
となると、それぞれの厚み、すなわちその量や密度の正確性も低下していることが考えられます。
これらの影響をできるだけ抑えるために、各管電圧撮影におけるエネルギー(実効エネルギーのようなもの?)と各物質の厚さ(量、密度)を未知数とした最小化問題を解くことで解(より正確な値)を求めることになります。
式で示すと以下の通りです。
意味が全く分からないという方は読み飛ばしてもらって構いませんが、この最小化問題を解くことで高管電圧と低管電圧それぞれの実効エネルギー(一意に定まる)と各物質の量が正確に定められることになります。
これによりDual energy解析の結果がより正確になるため、仮想単色X線画像でビームハードニングを補正した通常の120kVp画像に近いものを得ることができるという流れのようです。
また、根拠はいまいち理解できていないのですが、高keV画像において金属アーチファクトを低減することが可能なようです。
私も理解があいまいなので全然違う!というところがあったら是非教えてください!
最後に少し内容が重くなってしまいましたが、だいたいこのような臨床応用があるようです。
国試にはまだ出題がないので、今後出題されるとしてもこの程度押さえておけば十分だと思います。
Dual energy CT入門という記事を書いていながら、私もかなり入門中なので今後も勉強していきたいと思います。
ではまた!