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最速?!第72回国試問題解説②(第72回診療放射線技師国家試験午前77)

こんにちは!

今回は医用工学コンデンサキャパシタに関する問題を解いていきます。

問題は前回に引き続き最新の第72回午前77です。

77 図のように極板面積Aの平行板キャパシタコンデンサ)の極板距離のうちd_1が比誘電率\epsilon_1、残りのd_2が比誘電率\epsilon_2の誘電体で満たされている。 このキャパシタの電気容量(静電容量)Cを表す式はどれか。 ただし、電気定数(真空の誘電率)は\epsilon_0とする。


        f:id:Yuru-yuru:20200329004925j:plain:w300


  1.{\frac{\epsilon_1 \epsilon_2 \epsilon_0 A}{d_1 + d_2}}


  2.{\frac{d_1 + d_2}{\epsilon_1 \epsilon_2 \epsilon_0 A}}


  3.{\frac{\epsilon_0 A}{\epsilon_1 / d_1 + \epsilon_2 / d_2}}


  4.{\frac{\epsilon_0 A}{d_1 / \epsilon_1 + d_2 / \epsilon_2}}


   5.{\frac{\epsilon_1 / d_1 + \epsilon_2 / d_2}{\epsilon_0 A}}


(第72回診療放射線技師国家試験より引用)

高校で物理を履修していた人にとってはそんなに難問ではないと思うのですが、物理を履修しておらず、過去問だけで勉強していた方は今までに出題があまりなく、少し困ったのではないでしょうか。

なんとなく覚えていても、式変形が少しややこしいので意外と難しかったと思います。

今回は基本的な内容を確認してから、問題を解いていきます。

ではまず、コンデンサについて基本的な内容を確認していきます。


基礎の確認

コンデンサ充電・放電に用いられるデバイスであることは何となく知っているという方は多いと思います。

よく使う公式として、

 Q = CV

 Q:電荷量、C:静電容量(キャパシタンス)、V:電圧、電位差

があります。

過去の記事でも何度か登場しているので、気になる方は見てください。

今回はこの中から静電容量Cについてまとめていきます。


静電容量(キャパシタンス)

静電容量はコンデンサの性能を表す指標の一つですが、先程の式を見てわかるようにコンデンサがかけられた電圧に対してどのくらい電荷を蓄えられるかを表す量です。

名前のまんまですね。

式としては以下のように表されます。

    f:id:Yuru-yuru:20200329005233j:plain:w200

 C = \epsilon {\frac{S}{d}}

 ε:誘電率、d:極板間距離、S:極板面積

この式にそれぞれの値を代入すれば静電容量が求まるわけですが、少し注意が必要になるのは誘電率です。


誘電率

まず、極板間が真空である場合を基準として真空の誘電率\epsilon_0を用いて、

 C = \epsilon_0 {\frac{S}{d}}

と表せます。

極板間が誘電体で満たされている場合、真空の誘電率に対する相対的な値として誘電率\epsilon_rが与えられます。

相対的な値なので、極板に挟まれた空間の誘電率\epsilonは、

 \epsilon = \epsilon_0 \epsilon_r

で表すことができます。

誘電率をそのまま誘電率として使用しないように注意しましょう!


合成静電容量

続いて静電容量の合成について確認します。

コンデンサの接続は直列並列の2パータンがあります。

f:id:Yuru-yuru:20200329005433j:plain:w400

直列の場合、合成静電容量Cは以下の式で表されます。

 {\frac{1}{C}} = {\frac{1}{C_1}} + {\frac{1}{C_2}}

少し変形すると、

 C = {\frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}}

とも表せます。

これに対して、並列の場合、合成静電容量Cは以下の式で表されます。

 C = C_1 + C_2

これもちゃんと計算すれば求められるのですが、私は抵抗の反対と覚えてしまっています。

また、この法則はコンデンサの数が増えても成り立ちます。

だいたい基礎の確認はこの程度で大丈夫だと思います。

では、問題を解いていきましょう!


問題の解説

まずは、静電容量の合成からやっていきます。

極板間が異なる誘電率をもつ誘電体で満たされている場合、以下のように2つのコンデンサに分けることができます。

f:id:Yuru-yuru:20200329005547j:plain:w500

コンデンサの静電容量をC_1C_2とすると、

 C_1 = \epsilon_0 \epsilon_1 {\frac{A}{d_1}}

 C_2 = \epsilon_0 \epsilon_2 {\frac{A}{d_2}}

と表せますね。

先程も言いましたが、誘電率をそのまま誘電率に使わないように注意しましょう!

では、この2つのコンデンサの静電容量を合成します。

今回コンデンサ直列に接続されているので、合成静電容量は

 C = {\frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}}

であり、先程の式を代入すると、

 C = {\frac{\epsilon_0 \epsilon_1 {\frac{A}{d_1}} \cdot \epsilon_0 \epsilon_2 {\frac{A}{d_2}}}{\epsilon_0 \epsilon_1 {\frac{A}{d_1}} + \epsilon_0 \epsilon_2 {\frac{A}{d_2}}}}

  = {\frac{\epsilon_0 ^2 A ^2 {\frac{\epsilon_1 \epsilon_2}{d_1 d_2}}}{\epsilon_0 A \left({\frac{\epsilon_1}{d_1}} + {\frac{\epsilon_2}{d_2}}\right)}}

  C = {\frac{{\frac{\epsilon_0 \epsilon_1 \epsilon_2 A}{d_1 d_2}}}{{\frac{\epsilon_1}{d_1}} + {\frac{\epsilon_2}{d_2}}}}

ここから選択肢の形にたどり着くのが少々ややこしいです。

分母分子に{\frac{d_1 d_2}{\epsilon_1 \epsilon_2}}を乗じると、

 C = {\frac{{\frac{\epsilon_0 \epsilon_1 \epsilon_2 A}{d_1 d_2}} \times {\frac{d_1 d_2}{\epsilon_1 \epsilon_2}}}{\left({\frac{\epsilon_1}{d_1}} + {\frac{\epsilon_2}{d_2}}\right) \times {\frac{d_1 d_2}{\epsilon_1 \epsilon_2}}}}

  = {\frac{\epsilon_0 A}{{\frac{d_1}{\epsilon_1}} + {\frac{d_2}{\epsilon_2}}}}

となり、解答はになります。

どうでしょうか?

最後に謎の式変形が入っているので、なかなかややこしい感じになってしまいましたね。

少し見づらいかもしれないので、一度自分で計算してみることをオススメします笑

何か誤りなどありましたら教えてください。

ではまた!

最速?!第72回国試問題解説①(第72回診療放射線技師国家試験午前5)

こんにちは!

今回から最新の第72回の国試問題解説をやっていきます!

最速かどうか定かではありませんが、少し難しいかなと思った問題について解説していきたいと思います。

できる限り正確な解説を心掛けていますが、誤った解釈をしている可能性も十分ありますので、誤りがありましたら遠慮せずご指摘ください!

ただ、簡単な解説だけではもう少し待てば手に入る国試の過去問題集と同じになってしまうので、少し詳しく補足を加えながら解説していけたらと思います。

第1回は午前5の問題です。

5 変圧器の等価回路を図に示す。

励磁アドミタンス\dot{Y_0}を無視して二次側に換算したとき、二次側電圧\dot{V_2}を示す式はどれか。

ただし、aは巻線比とする。


f:id:Yuru-yuru:20200327162611j:plain


1 a \dot{V_1} + \{a ^2 r_1 + r_2 + j(a ^2 x_1 + x_2)\}a \dot{I_1}

2 a \dot{V_1} + \{a ^2 r_1 + r_2 + j(a ^2 x_1 + x_2)\}a ^2 \dot{I_1}

3 a \dot{V_1} - \{a ^2 r_1 + r_2 + j(a ^2 x_1 + x_2)\}(\dot{I_1}/a)

4 a \dot{V_1} - \{r_1 + a ^2 r_2 + j(x_1 + a ^2 x_2)\}(\dot{I_1}/a)

5 a \dot{V_1} + \{a ^2 r_1 + r_2 + j(a ^2 x_1 + x_2)\}(\dot{I_1}/a)


診療画像機器学等価回路に関する問題ですね。

午前の初っ端から多くの受験生が面食らったのではないでしょうか。

初めは国試の難問シリーズで出そうと思ったのですが、難問というほどでもないかと思ったので国試の解説として出すことにしました笑

覚えていれば全然大したことない問題ですが、残念ながら私は忘れていたので自力で導きました笑

では、まず基本から復習しましょう。


基礎の確認

変圧器等価回路の基礎について復習します。


変圧器

変圧器については以前の記事でも簡単にまとめています。

yuruyurudokugaku.hatenablog.jp

この記事でも書いているように変圧比(巻数比)電圧・電流の関係は以下の式で表されます。

 {\frac{V_2}{V_1}} = {\frac{N_2}{N_1}} = {\frac{I_1}{I_2}} = a

電気工学ではこの逆比で定義されている場合が多いと思います。

これは変電設備などでは変圧器が降圧に用いられるためですが、X線高電圧発生装置では昇圧を行うため、このように定義されているのだと思います。

変圧器はこれだけ押さえておけば大丈夫です。


等価回路

実は等価回路についてよく分かっていなくても今回の問題は解けてしまうのですが、今後の出題も考えて少しだけ確認します。

等価回路では変圧器などを含む2つの回路を一次側もしくは二次側に換算して1つの回路のように扱うものです。

先程の図を使って考えてみます。

f:id:Yuru-yuru:20200327162611j:plain:w500

まずは一次側換算からやってみましょう。

先程の変圧比の式より、

 E_1 = {\frac{1}{a}} E_2

 I_1 = a I_2

となるため、二次側のインピーダンスZ_2を一次側に換算したインピーダンスZ_2'

 Z_2' = {\frac{E_2/a}{aI_2}} = {\frac{1}{a ^2}}Z_2

となります。

同様に二次側換算を考えてみましょう!



できたでしょうか?

先程の変圧比の式より、

 E_2 = a E_1

 I_2 = {\frac{1}{a}} I_1

となるため、一次側のインピーダンスZ_1を二次側に換算したインピーダンスZ_1'は、

 Z_1' = {\frac{a E_1}{I_1/a}} = a ^2 Z_1

となりますね。

等価回路もこの程度で大丈夫です。

では、問題を解いていきましょう!


問題解説

せっかく等価回路の基本を復習したんですが、これを覚えていなくても解けるので、その解き方で解いていきます。

もう一度回路を確認します。

f:id:Yuru-yuru:20200327193530j:plain:w500

励磁アドミタンスを無視して考えます。

一次側、二次側の回路それぞれについて、

f:id:Yuru-yuru:20200327194535j:plain:w500

 \dot{V_1} - (r_1 + j x_1) \dot{I_1} - \dot{E_1} = 0・・・①

 \dot{E_2} - (r_2 + j x_2) \dot{I_2} - \dot{V_2} = 0・・・②

となるため、

 \dot{E_1} = \dot{V_1} - (r_1 + j x_1) \dot{I_1}

 \dot{E_2} = \dot{V_2} + (r_2 + j x_2) \dot{I_2}

E_2 = a E_1より、

 \dot{V_2} + (r_2 + j x_2) \dot{I_2} = a \{\dot{V_1} - (r_1 + j x_1) \dot{I_1}\}

 \dot{V_2} = a \{\dot{V_1} - (r_1 + j x_1) \dot{I_1}\} - (r_2 + j x_2) \dot{I_2}

さらに、I_2 = {\frac{\dot{I_1}}{a}}より、

 \dot{V_2} = a \{\dot{V_1} - (r_1 + j x_1) \dot{I_1}\} - (r_2 + j x_2) {\frac{\dot{I_1}}{a}}

少し式変形すると、

 \dot{V_2} = a \dot{V_1} -\{a ^2(r_1 + j x_1) - (r_2 + j x_2)\} {\frac{\dot{I_1}}{a}} 

   = a \dot{V_1} - \{a ^2r_1 + r_2 - j(a ^2x_1 + x_2)\} {\frac{\dot{I_1}}{a}} 

となります。

よってが正答となります。

先程の等価回路の式を思い出すと、一次側のインピーダンスを二次側に換算した場合、

 Z_1' = a ^2 Z_1

でしたよね。

導いた式を見ると、一次側のインピーダンスがちゃんとa ^2になっています。

個人的には今回紹介した方法なら変圧器の式さえ覚えていれば解けるのでオススメです。

少し式が複雑になりましたが、理解できたでしょうか?

ではまた!

「逐次壊変」を理解する

こんにちは!

今回は「逐次壊変」についてまとめていきます。

逐次壊変は親核種の壊変で生成される娘核種が放射性である場合に、さらに壊変して孫核種が生成されるような壊変です。

f:id:Yuru-yuru:20200317205528j:plain:w500

国試では主に放射平衡の分野で出題されます。

ジェネレータなどの過渡平衡永続平衡とかですね。

これらはある一定の時間が経過した後の親核種・娘核種の関係を近似的に表したものです。

詳しくは後程説明しますが、近似を行わない式はもう少し複雑になります。

教科書などでも書いてはありますが、その導出はどうしても微分方程式の解き方を知らないと難しいものです。

簡単な微分方程式積分の知識がないとよく分からないかもしませんが、ちょくちょく補足していきます。

国試に出題されることは少ないかもしれませんが、一度見ておくと良いかもしれません。

では、まずは基本から見ていきます。


逐次壊変の微分方程式

放射性壊変の式を導くためには微分方程式を解く必要があります。

まずは、一般的な放射性壊変の式の導出を見ていきます。


一般的な放射性壊変

親核種の数をN_1 (t)としたとき、極めて短い時間dt内の核種数の変化は、

 {\frac{dN_1(t)}{dt}}

と表せます。これは親核種の数N_1(t)比例することが知られているため、

 {\frac{dN_1(t)}{dt}} = - \lambda_1 N_1(t)

\lambda_1は比例定数であり、壊変定数と呼ばれるものです。

また、右辺に-がついているのは放射性崩壊により親核種の数が減っていくからですね。

この微分方程式を解くのはそんなに難しくないと思います。

少し式を変形すると、

 {\frac{1}{N_1(t)}}dN_1(t) = -\lambda_1 dt

両辺を積分すると、

 \int {\frac{1}{N_1(t)}}dN_1(t) = -\lambda_1 \int dt

    \ln{N_1(t)} = -\lambda_1 t + C (Cは積分定数

     N_1(t) = e ^{-\lambda_1 t + C}

積分では以下の関係を使用しました。

\int {\frac{1}{x}}dx = \ln x

e ^C = C'とすると、

 N_1(t) = C' e ^{-\lambda_1 t}

初期条件からもう少し進めます。

t=0のとき、親核種の個数N_1(0)は、

 N_1(0) = C' e ^{-\lambda_1 \times 0} = C'

となるため、最終的な式は

 N_1(t) = N_1(0) e ^{-\lambda_1 t}

と求まります。

X線の減弱についての式もほとんど同じように導出されます。

では、続いて逐次壊変微分方程式の立式について見ていきます。


逐次壊変の立式

親核種については先ほどの式と同じく、

 {\frac{dN_1(t)}{dt}} = -\lambda_1 N_1(t) ・・・(1)

と立式できます。

次に娘核種についてです。

娘核種が壊変定数\lambda_2で壊変する場合、娘核種の数N_2(t)壊変定数\lambda_1増加しながら壊変定数\lambda_2減少することになります。

このため、微分方程式

 {\frac{dN_2(t)}{dt}} = \lambda_1 N_1(t) - \lambda_2 N_2(t) ・・・(2)

と立式できます。

やっと連立微分方程式の立式までこぎつけました!

このように逐次壊変では2つの微分方程式を解くことになります。

言葉を聞くだけでイヤな感じですが、何とか頑張りましょう笑


逐次壊変の微分方程式を解く

早速解いていきたいところですが、なかなか計算過程をただ見ただけでは納得できないかと思います。

このため、まずは微分方程式を解く過程で必要となるテクニックから見ていきます。


微分方程式のテクニック

まずは以下のような微分方程式の解法を考えます。

 f'(t) + \alpha f(t) = \beta

けっこう頑張って考えてもどうやって解けばよいか思いつかないと思います。

私も全然詳しくないですが、解くことができる微分方程式の形はかなり限られています。

このため、解き方をその場で考えるというよりかは微分方程式の形からその解き方を当てはめて解くというのが一般的なようです。

では、上記のような微分方程式の解き方を見ていきましょう。

この式の両辺に未知関数g(t)を掛けると、

 f'(t)g(t) + \alpha f(t)g(t) = \beta g(t)

ここで、g'(t) = \alpha g(t)のとき、

 (左辺) = f'(t)g(t) + f(t)g'(t) = \{f(t)g(t)\}'

となります。

実際に計算してみればわかるのですが、左辺がこのような形になれば単純な微分方程式に近い解き方ができるようになります。

少々複雑ですが、このテクニックを使って逐次壊変の微分方程式を解いていきます!


娘核種の微分方程式

それでは先程の微分方程式

 {\frac{dN_2(t)}{dt}} = \lambda_1 N_1(t) - \lambda_2 N_2(t) ・・・(2)

を解いていきます。

少し移項してやると、

 {\frac{dN_2(t)}{dt}} + \lambda_2 N_2(t) = \lambda_1 N_1(t)

となります。

この式をよく見てやると先程紹介した、

 f'(t) + \alpha f(t) = \beta

似たような形になっていると思います。

ということは、g'(t) = αg(t)となる関数g(t)を探して、両辺に掛けてやればよいということになります。

微分しても形が変わらず、係数だけが変化する関数には何があるでしょう?




そうです!e ^{\alpha t}ですね!

(e ^{\alpha x})' = \alpha e ^{\alpha x}

今回の微分方程式では求めたい関数f(t)がN_2(t)なので、関数g(t)は、

 g(t) = e ^{\lambda_2 t}

になります。

このg(t)を両辺に乗じると、

 {\frac{dN_2(t)}{dt}} e ^{\lambda_2 t} + \lambda_2 N_2(t) e ^{\lambda_2 t} = \lambda_1 N_1(t) e ^{\lambda_2 t}

となり、N_1(t) = N_1(0) e ^{-\lambda_1 t}より、

 {\frac{dN_2(t)}{dt}} e ^{\lambda_2 t} + \lambda_2 N_2(t) e ^{\lambda_2 t} = \lambda_1 N_1(0) e ^{(\lambda_2 t - \lambda_1 t)}

このとき、左辺は

 (左辺)= (N_2(t))' e ^{\lambda_2 t} + N_2(t) (e ^{\lambda_2 t})' = \{N_2(t) e ^{\lambda_2 t} \}'

と考えられるため、

 {\frac{d}{dt}}(N_2(t) e ^{\lambda_2 t}) = \lambda_1 N_1(0) e ^{(\lambda_2 t - \lambda_1 t)}

両辺をtで積分すると、

 N_2(t) e ^{\lambda_2 t} = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) e ^{(\lambda_2 t - \lambda_1 t)} + C(Cは積分定数

少し式を変形すると、

 N_2(t) = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) e ^{- \lambda_1 t} + Ce ^{-\lambda_2 t}

先程と同様に初期条件よりもう少し進めます。

t=0のとき、

 N_2(0) = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) e ^{- \lambda_1 \times 0} + Ce ^{-\lambda_2 \times 0}

よって、

 C = N_2(0) - {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0)

となるため、代入すると、

 N_2(t) = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) e ^{- \lambda_1 t} + \left( N_2(0) - {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) \right) e ^{-\lambda_2 t}

 N_2(t) = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) (e ^{- \lambda_1 t} - e ^{-\lambda_2 t}) + N_2(0) e ^{-\lambda_2 t}

はぁーやっと最後の式にたどり着きました笑

書いている私もかなり疲れました笑

ここまで読み続けてくれている方がどれだけいらっしゃるか分かりませんが、最後にこの式から過渡平衡、永続平衡の式を導いて終わりたいと思います。


過渡平衡・永続平衡の導出

何とか求めた娘核種の式から過渡平衡・永続平衡の式を導出してみましょう。


過渡平衡の導出

過渡平衡は\lambda_1\lambda_2のときに成り立つ放射平衡です。

多くの場合、N_2(0) = 0と考えるため、N_2(t)は、

 N_2(t) = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) (e ^{- \lambda_1 t} - e ^{-\lambda_2 t})

であり、十分に時間が経過したとき以下の近似が成り立ちます。

 e ^{- \lambda_1 t} - e ^{-\lambda_2 t} \approx e ^{-\lambda_1 t}

したがって、過渡平衡では

 N_2 = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1(0) e ^{- \lambda_1 t} = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1

という式が成り立ちます。


永続平衡の導出

永続平衡は\lambda_1\lambda_2のときに成り立つ放射平衡です。

\lambda_1\lambda_2の場合、先程の近似に加えて

 \lambda_2 - \lambda_1 \approx \lambda_2

の近似が成り立ちます。

よって、

 N_2 = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2}} N_1(0) e ^{- \lambda_1 t} = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2}} N_1

これで永続平衡の式も導くことができました。


おまけ

ここまで長ったらしい導出を頑張ってきましたが、国試の問題を解くときにいちいち導出するわけにはいきません笑

基本的には過渡平衡・永続平衡の式を暗記することになると思うのですが、過渡平衡の式は少しややこしいですよね。

「分子は\lambda_1\lambda_2?」

「分母は\lambda_2 - \lambda_1\lambda_1 - \lambda_2?」

といった風に迷うことがあると思います。

このため、とりあえず永続平衡の式だけ暗記することをオススメします。

 \lambda_1 N_1 = \lambda_2 N_2

これですね。

式変形すると、

 N_2 = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2}} N_1

ここで先程の近似を思い出してください。

永続平衡では\lambda_1\lambda_2より、

 \lambda_2 - \lambda_1 \approx \lambda_2

と近似しましたよね。

これを逆に考えれば過渡平衡の式、

 N_2 = {\frac{\lambda_1}{\lambda_2 - \lambda_1}} N_1

も導きやすいのではないでしょうか。

単なる気休め程度ですが、試してみてください。


まとめ

今回はかなり長々と放射平衡についてまとめてみました。

恐らくそんなに需要はなかったと思うのですが、私自身どうやって計算しているのか、かなり悩んだので同じように悩んだ人に向けて書いてみました笑

何か誤りがありましたら教えてください!

ではまた!

医用工学特講 第8回:二極真空管の特性曲線

こんにちは!

今回は二極真空管の特性曲線についてまとめていきます。

二極真空管の特性曲線と言われて「???」な人でも図を見ればピンとくると思います。

f:id:Yuru-yuru:20200312141550j:plain:w400

こんなヤツです。

最近では第70回、第68回、第67回に出題されており意外に頻出な問題です。

では、二極真空管の特性曲線について基礎を確認した後、実際に問題を解いていきましょう。


二極真空管の特性曲線

二極真空管とは

そもそも二極真空管とは何だというところからスタートします。

二極真空管とは陰極にあたるフィラメントと、陽極にあたる金属板とを封入した真空管です。

この文章を読んでピンと来た人もいるかと思います。

そうです、これはX線そのものです!

つまり、二極真空管の特性X線管の特性と考えれば良いということになります。

二極真空管が何者か分かったところで特性曲線に移りましょう。

二極真空管の特性曲線は先程示した通り、このような形になっています。

f:id:Yuru-yuru:20200312141550j:plain:w400

この特性曲線は以下の3つの領域に分けることができます。

 (1) 初速度領域

 (2) 空間電荷制限領域

 (3) 温度制限領域

では、それぞれについてみていきましょう!


(1) 初速度領域

グラフを見れば分かりますが、初速度領域では陽極電圧がになっています。

しかし、負の電圧がかかっているにも関わらず、わずかですが陽極電流はになっています。

これはどういうことでしょう?

もちろん普通の回路では負の電圧がかかっている時に正方向に電流が流れるということはありませんが、二極真空管X線管)では回路が繋がっているわけではありません

陰極のフィラメントが加熱されることで飛び出した熱電子が電圧によって加速され、ターゲットに到達することで陽極電流が流れることになります。

陰極から飛び出す熱電子は運動エネルギーを持っていますから、負の電圧がかかっていても陽極まで到達する熱電子も存在するわけです。

つまり、熱電子の初速度によって陽極電流が決まる領域ということです。

続いて陽極電圧が正となった空間電荷制限領域について見ていきましょう。


(2) 空間電荷制限領域

何だか名前も長く、漢字しかないので見るだけでイヤな感じですが、意味を理解すれば大したことありません。

先程の初速度領域と違い、陽極電圧はになっていますから熱電子は正方向に加速されます。

この陽極電圧がある一定の値を超えるまでは、電圧の値に応じて電流の値が変化していきます。

この領域が空間電荷制限領域です。

もう少し詳しくみていきましょう。

電子が放出され、陽極に向かって加速されますが、この電子の密度が高くなるとどういうことが起きるでしょうか?

電子はご存知の通り、負の電荷を持っています。

このため、電子同士は反発し合います。

電圧が小さいと陽極付近の電子群(空間電荷)によって放出された電子が斥力(反発力)を受けるため、陽極まで到達できない電子が存在することになります。

これは電圧が高くなるほど少なくなっていくことは明らかでしょう。

空間電荷によって陽極に到達できる電子が制限される領域ということです。

結果的に陽極電流Ipと陽極電圧Vpの間には以下の関係となります。

 I_p \propto {\frac{V_p ^{3/2}}{d ^2}}

dは電極間距離です。

まぁ近い方が多くの熱電子が到達できそうですよね。

では、さらに陽極電圧が高くなった温度制限領域(飽和領域)について見ていきましょう


(3) 温度制限領域(飽和領域)

この領域は温度制限領域飽和領域と呼ばれます。

飽和領域というのは、ある程度まで電圧を高くするとほぼ全ての熱電子が陽極に到達するため陽極電流が飽和する領域という意味です。

このことに加えて、先ほど示した図ではT1T2の2つの特性曲線が描かれています。

このTは陰極フィラメントの温度を示しています。

先程言ったように、この領域では放出された熱電子のほとんどが陽極に到達するため、陽極電流が飽和しています。

つまり、これ以上陽極電流を増加させるためには熱電子の放出量を増やす、すなわち陰極フィラメントの温度を上げるしかないということです。

このように陽極電流が陰極フィラメントの温度によって制限を受ける領域ということですね。


大方理解できたでしょうか?

知識の確認のため、実際の問題を解いてみましょう!


問題演習

問題は第67回午前75です。

(第67回診療放射線技師国家試験より引用)

以下解説となるので先に解いて見てください。



では、各選択肢を見ていきます。

1.(1)は電流が流れない領域である。

グラフを見れば一発ですが、どう見ても流れていますよね。

よって誤りです。

2.⑵は陽極電流が陽極電圧の3/2乗に比例する領域である。

これは先程確認した通り、正しいですね。

3.⑵は陰極温度に制限された電流が流れる領域である。

先程の説明に従うと、これは温度制限領域を指しているので(3)ですね。

よって誤りです。

4.⑶は空間電荷に制限された電流が流れる領域である。

これは空間電荷制限領域を指しているので(2)ですね。

よって誤りです。

5.T1は T2に比べてフィラメント加熱電流が多い。

フィラメント温度が高い方が熱電子の放出量が多くなるため、陽極電流は大きくなります。

このためT2の方がフィラメント加熱電流が大きいことになります。

よって誤りです。

したがって、解答は2になります。

少し文章ばかりになってしまいましたが、理解できたでしょうか?

この類題が第70回午後78と第68回午後78に出題されているので、気になる方はぜひ解いてみてください。

また何か誤りなどありましたら教えてください。

ではまた!

「高電圧発生装置」を理解する③

こんにちは!

今回はついにインバータ式装置です!

ここまで長々と高電圧装置について説明してきましたが、現在実際に使われているのはほとんどこのインバータ式装置です。

少し記事が長くなりましたが、最後まで読んでみてください!

まずは、インバータ式装置の基本について見ていきます!


インバータ式装置の基本

インバータ式装置の目的

インバータ式装置では①商用電源(交流)を直流に変換した後、②インバータを用いて高周波の方形波交流電圧を出力します。

まず、なぜこのような過程が必要なのでしょうか?

これを理解するためにはさらに基本に立ち返る必要があります。

「高電圧発生装置」を理解する①を読んでいただいた方は分かると思いますが、高電圧装置が目標とするのは「供給電圧の安定性」でした。

三相交流では位相をずらした商用電源(交流)の組合せによりリプル百分率を小さくしていましたが、インバータ式装置では先程の①、②の過程で高周波の交流電圧を作り出し、整流することで三相12ピーク形装置よりリプル百分率を小さくしています。

ん?ちょっと待てよ?直流に変換したならそのまま使えばいいんじゃね?

と思った方はよく考えられていると思います(偉そうですいません笑)

リプルを小さくしたいだけなら直流に変換できればいいのですが、高電圧発生装置にはほかにもポイントがありましたよね。

それは、高電圧を発生させるための変圧です。

変圧器を用いて変圧する場合には、交流が必要になります。

このためにわざわざ交流→直流→交流という過程をたどっているわけですね。

理解できたでしょうか?

では、続いてインバータの原理について簡単にまとめます。


インバータの原理

インバータ自体はそんなに難しいものではありません。

回路としては以下のようなものです。

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Trはトランジスタの略であり、スイッチング素子です。

詳しくは説明しませんが、電流を通したり通さなかったりする半導体というやつです。

インバータでは直流→交流の変換を行うので、電源は直流です。

まず、Tr1Tr3が開通し、Tr2Tr4が閉鎖している場合、電流は回路の①の向きに流れます。

次に、Tr2Tr4が開通し、Tr1Tr3が閉鎖している場合、電流は回路の②の向きに流れます。

このスイッチングを繰り返すことで、直流から交流を作り出すことができます。

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そんなに難しくないですよね。

では、非共振形共振形それぞれの原理について見ていきましょう。


非共振形インバータ式装置の原理

非共振形インバータ式装置では大まかに以下のような流れで高電圧を発生させています。

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回路をみても読む気がなくなりそうなので、概念図のみとしました。

(決して回路図をつくるのが面倒くさかったわけではありません…決して笑)

気になる方は教科書を見れば書いてあると思うのでチェックしてください。

では1つずつ見ていきます。


AC-DCコンバータ

AC交流DC直流を示しています。

コンバータは変換を示す言葉なので、交流を直流に変換する機構ということですね。

これは先ほどインバータ式装置の基本で説明した商用交流を直流に変換する過程にあたります。

原理としては、まず商用交流(三相交流)に対して整流を行います。

前回までの記事を読んでもらえればわかると思いますが、整流を行っただけでは脈動が大きく直流とは言いにくいです。

このため、波形を平滑にするためのコンデンサが回路に組み込まれています。

これによりある程度脈動が抑えられた疑似的な直流が完成します。

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DC-DCコンバータ

このDC-DCコンバータが非共振形インバータ式装置において重要になります。

後程まとめて説明しますが、ここが共振形インバータ式装置との大きな違いになります。

DC(直流)-DC(直流)コンバータですから直流→直流に変換する機構です。

この過程は1次電圧を調整するために必要になります。

変圧器の変圧比が固定とすると、管電圧を調整する際に1次電圧を調整するしかありません。

DC-DCコンバータではチョッパ回路平滑化フィルタ回路を用いて1次電圧を調整しています。

チョッパ回路はいわゆるスイッチング回路です。

AC-DCコンバータからの出力(直流)に対してスイッチングを行うと以下のようになります。

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このスイッチングにおいて、開通時間を調整し、平滑フィルタ回路を通すことで電圧全体を調節することができます。

1周期当りのスイッチONの時間の比がデューティ比と呼ばれるものです。

以下の図で簡単に説明します。

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なんとなく理解できると思いますが、デューティ比が大きいほど、平滑したときの電圧が大きくなります。

かなり理想的な話ですが、平滑化前後で波形の面積が等しくなると考えればよいと思います。

このような形で1次電圧が調整されました。


インバータ回路

インバータ回路は先ほど説明した通りですね。

電圧を調整された直流をスイッチングにより交流に変換します。

スイッチング素子が非常に高速・高精度のため、高周波の交流電圧を出力できます。


変圧器、整流器

ここからは前回までの高電圧装置とほぼ同様ですね。

変圧器により昇圧を行い、さらに整流を行うことでリプル百分率をかなり小さくした電圧を出力します。

だいたいこんな感じです。

では、共振形インバータ式装置について見ていきます。


共振形インバータ式装置の原理

共振形インバータ式装置では大まかに以下のような流れで高電圧を発生させています。

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非共振形と同じく、概念図のみとしました。

非共振形と同じ部分もかなり多いので、異なる部分のみ説明していきます。


共振回路

共振形と名前についていますから、もちろん共振回路が含まれています。

非共振形ではDC-DCコンバータを用いて1次電圧の調整をしていましたが、共振形では共振回路を用いて1次電圧の調整を行います。

共振回路については、以前の国試の難問⑤の記事を読んでいただければと思います。

簡単に説明すると、交流の周波数によりインピーダンスが変化し、流れる電流が変化するというものです。

以下の図に示すように、共振周波数に近づけていくほど電流は大きくなり、それ以上になるとまた小さくなっていくという特性を示します。

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つまり、インバータ回路によって周波数を調整すれば1次電流を調整できるため、結果的に1次電圧を調整することになります。

細かい違いはあるのかもしれませんが、大きく異なるのはこの共振回路のみです。

DC-DCコンバータの代わりに共振回路が入っていると思えばいいのではないでしょうか。


まとめ

インバータ式装置についてはだいたいこんな感じでいいと思います。

教科書を読めばもっとたくさん書いてありますが、基本はこの程度です。

国試では他にインバータ式装置の特性なども出題されますが、この原理が分かっていれば理解できるものがほとんどなので原理をしっかり理解しておくとよいと思います。

何か誤りなどありましたら教えてください。

ではまた!

国試の良問①(第65回診療放射線技師国家試験午前12)

こんにちは!

今回は国試の難問シリーズに引き続き、国試の良問を紹介したいと思います。

①とつけていますが、連続して出せるかどうかは分かりません笑

少し偉そうになってしまいますが、良い問題だなと思う問題があれば出したいと思います。


さて、国試の良問というタイトルですが、この良問の基準としては

 ①難しすぎない(初見でもなんとか解ける)

 ②1問で複数のことを学べる

ような問題を選んでいます。


今回は診療画像機器学X線高電圧発生装置に関する問題です。

機器学は医用工学や画像工学に負けず劣らず苦手という人が多いように思います。

教科書も少し難しいことが多く、理解が難しかったりするのですが、段階を踏んでいけばきっと理解できると思うので頑張りましょう!


必要な知識

まずは毎度のごとく、必要となる基礎知識から確認していきます。

今回必要となるのは、

 1.変圧

 2.管電圧、管電流

に関する知識です。

それぞれ見ていきましょう。


1.変圧に関する知識

X線を発生させるためには、診断レベルでは数十kV程度の高電圧が必要となりますよね。

普段我々が使用している電源は100Vとか200Vといった比較的低い電圧です(これでも十分危険ですが)。

大きな工場など電力を大量に消費するような施設にはもう少し高い電圧で送電されますが、それでも数kV程度です。

つまり、病院などで数十kVもの高電圧を発生させるためには変圧器というものが必要になります。

変圧器の細かい仕組みから理解していると長くなるので省略しますが、気になる方は是非調べてみてください。


今回覚えてほしいのは、以下の式です。

 {\frac{V_2}{V_1}} = {\frac{N_2}{N_1}} = {\frac{I_1}{I_2}} = a

Vは電圧、Iは電流、Nはコイルの巻き数、aは変圧比です。

原理はともかく覚えている方も多いと思います。

この問題では巻き数と変圧比は関係しませんが、変圧比は少し厄介なことがあります。


一般的に送電などで変圧器が使われる場合、末端に行くほど降圧していくことから、変圧比が1より大きくなるように、

 {\frac{V_1}{V_2}} = a

とされていることが多いのですが、X線高電圧装置では昇圧を行うので、

 {\frac{V_2}{V_1}} = a

と書かれている場合が多いです。

今年の国試でも出題された等価回路などでは後者で定義されていると思うので、注意しましょう。

ちょっと話がそれました笑 

本題に戻りましょう。


2.管電圧、管電流に関する知識

先程までの電圧・電流はあくまで一次電圧(電流)・二次電圧(電流)です。

これらは多くの場合、「実効値」で示されています。

これに対して、管電圧は「最大値」、管電流は「平均値」が用いられています。

電圧・電流の最大値、実効値、平均値には以下の関係がありましたよね。

 実効値 V_e = {\frac{1}{\sqrt{2}}}V_{max}

 平均値 I_a = {\frac{2}{\pi}} I_{max}

管電圧・管電流を扱う場合はこのことに注意する必要があります。

基礎知識の確認が済んだところで、問題を解いていきましょう!


問題演習

問題は第65回午前12です。

(第65回診療放射線技師国家試験より引用)

条件として一次電圧管電圧管電流が与えられており、一次電流を求めるという問題です。

まずは一次電圧と管電圧から変圧比を求めましょう。

先程説明した通り、一次電圧は実効値、管電圧は最大値なので実効値にそろえます。

 V_2 = {\frac{1}{\sqrt{2}}} V_p = {\frac{150 \times 10 ^3}{\sqrt{2}}}

よって変圧比は、

 {\frac{V_2}{V_1}} = {\frac{\frac{150 \times 10 ^3}{\sqrt{2}}}{200}} = {\frac{150 \times 10 ^3}{200 \sqrt{2}}}

となります。

次に管電流(平均値)二次電流(実効値)に変換します。

先程の関係より、

 I_2 = {\frac{\pi}{2 \sqrt{2}}} I_a = {\frac{\pi}{2 \sqrt{2}}} \times 200 \times 10 ^{-3}

となります。

これで準備が整いました。

一次電流を求めましょう!

{\frac{I_1}{I_2}} = {\frac{V_2}{V_1}}より、

 I_1 = {\frac{V_2}{V_1}} \times {I_2}

   =  {\frac{150 \times 10 ^3}{200 \sqrt{2}}} \times  {\frac{\pi}{2 \sqrt{2}}} \times 200 \times 10 ^{-3}

   ={\frac{150 \times \pi}{4}}

   \simeq 118

と求められます。

変圧についてだけでなく、管電流や管電圧についても学ぶことができるいい問題だと思います!

ぜひ一度自分で解いてみてください。

国試の良問②がいつになるかはわかりませんが、、、

ではまた!

医学物理士認定試験問題にチャレンジ!

こんにちは!

今回は医学物理士認定試験について紹介したいと思います。

紹介と言っておきながらなんですが、私は一度も受けたことはありません!

ですので、「医学物理士とは何ぞや」「認定試験の詳しい形式を知りたい」、「認定の手順を知りたい」という方にはあまり参考にならないかもしれません。

私自身、国試の勉強に飽きてしまい興味本位で解いてみただけなので、この記事では一体どのような問題が出題されるのかに焦点を当てていきます!


医学物理士認定試験とは?

まず、どのような試験かについて簡単にまとめます。

医学物理士認定試験では、

 ・記述式 物理工学系

 ・多肢選択式 物理工学系

 ・多肢選択式 医学生物系

の3つの試験形式があります。

各出題方式の科目と難易度について簡単に整理していきます。


記述式 物理工学系

記述式物理工学系では、以下の5科目から出題されます。

 放射線診断物理学

 核医学物理学

 放射線治療物理学

 放射線計測学

 ・保健物理学/放射線防護学

これら5科目各2問から3科目各1問を選択して解くことになります。

記述式は毎年度異なる問題が出題されており、あまり過去問演習の意義はないように感じました。

ほとんど解いていないのでサラっと見た感じでは、難易度もなかなか高く、よく知っている内容でなんとか完答できる位のレベルだと思いました。

治療では内容は易しめですが、急に英文が出題されたりなど、出題傾向が読みづらいです。


多肢選択式 物理工学系

多肢選択式物理工学系では、以下の9科目から出題されます。

 放射線物理学

 統計学

 ・保健物理学/放射線防護学

 放射線診断物理学

 核医学物理学

 放射線治療物理学

 放射線計測学

 ・医療・画像情報学

 放射線関連法規および勧告/医療倫理

放射線物理学が15問、統計学が5問、それ以外が各10問の計90問です。

難易度についてはそれぞれ後ほど少し詳しく書きますが、全体的に診療放射線技師国家試験より少し難しく、+αで勉強しなければならない分野もいくつかあります。

しかし、記述式と異なり同じ問題や類題が度々出題されているので過去問演習が有効だと感じました。


多肢選択式 医学生物系

多肢選択式医学生物系では、以下の5科目から出題されます。

 基礎医学

 放射線診断学

 核医学

 放射線腫瘍学

 放射線生物学

基礎医学が20問、それ以外が各10問の計60問です。

難易度は放射線診断学放射線腫瘍学に関しては追加で勉強する必要がありそうですが、他の科目は診療放射線技師国家試験レベルで十分だと感じました。


解答が無料では公開されていないので、実際にどの程度解けているのかわかりませんが、大体このような感じだと思います。

放射線技術系ではない方からするとまた違った感想になるのかもしれません。

それではこれら3つの出題形式の中から、多肢選択式物理工学系について実際の問題を示しながら詳しく見ていきます。


実際の出題(多肢選択式物理工学系)

各形式の過去問は医学物理士認定機構のホームページで公開されています。

URL:医学物理士認定試験 | 一般財団法人 医学物理士認定機構

2017年度、2018年度の問題から各科目1問ずつ見ていきます。


放射線物理学

2017年度問題1です。

(2017年度医学物理士認定試験より引用)

量子力学についての出題です。

理工系の方からすると簡単なのかもしれませんが、放射線技術系(少なくとも私)からすると「???」という感じだと思います。(違ったらすいません)

放射線物理学の教科書には書いてあるのかもしれませんが、少なくとも国試の過去問ではみた覚えがありません。

調べてみたところ、1次元調和振動子のエネルギー固有値

 E_n = \left(n + {\frac{1}{2}} \right) \hbar \omega

で表され、第1励起状態(n = 1)のとき、

 E_n = {\frac{3}{2}} \hbar \omega

となるため、解答はcのようです。

なぜそうなるのか気になり、調べてみましたが沼にハマりそうだったので後回しにしてはや数ヶ月です笑

これ以外にも電磁気学解析力学相対論など基礎物理学の出題が厄介だと感じました。

ですが、基本的には放射線技師の国試と類似した出題が多いと思います。


統計学

2018年度問題16です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

統計学の基礎的な問題ですが、これもまた放射線技師の国試には出題されていないので追加の勉強が必要かと思います。

統計学が1つの科目として追加されたのはここ数年のようで、問題の蓄積がないのでなんとも言えませんが基本的な内容を問うものが多いようです。

解答は以下のようになると思います。

確率密度関数f(x)の平均値\mu 、分散\sigma ^2は以下の式で求められる。

 \mu = \int_{-\infty}^{\infty} x f(x) dx

 \sigma ^2 = \int_{-\infty}^{\infty} {(x-\mu)} ^2 f(x) dx

与えられたf(x)について計算すると、

 \mu = \int_{0}^{\infty} x e ^{-x} dx = 1

 \sigma ^2 = \int_{0}^{\infty} {(x - 1)} ^2 e ^{-x} dx = 1

実際の計算過程は部分積分が必要だったりして、なかなか面倒くさいですが、一応このように求められます。

(指数分布の期待値と分散として公式的にも求まるんですかね?)


保健物理学/放射線防護学

2018年度問題29です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

基本的には国試と同程度の難易度ですが、時々聞いたことがないものについての出題があります。

この問題では緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information:SPEEDI)について問われています。

SPEEDI自体聞いたことがなかったので「???」となりました。

意識しないと勉強しない分野だと思うので、国試に出ない内容についても情報収集しておくと良い気がします。

解答としては以下のようになります。

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information:SPEEDI)は原子力発電所などから大量の放射性物質が放出されたり、その恐れがあるという緊急事態に、周辺環境における放射性物質の大気中濃度および被ばく線量など環境への影響を、放出源情報、気象条件および地形データを基に迅速に予測するシステムである。

d)食品中の放射性物質濃度は計算しない。

解答はdになります。


放射線診断物理学

2018年度問題35です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

放射線診断物理学も国試とほぼ同じようなレベルの問題が多いように感じました。

この問題も国試ではあまり見ない問題ですが、出題されていてもおかしくない問題だと思います。

解答としては以下のようになります。

胸部CT画像は主に軟部組織、リンパ節、血管などの評価を行うための縦隔条件と気管、気管支、肺内血管、肺野などの評価を行うための肺野条件の2つがある。

それぞれのWWとWLは、

縦隔条件 WW:300~400程度、WL:0~40程度

肺野条件 WW:1000~1500程度、WL:-500~-700程度

であるためc、dが正しいと考えられます。


核医学物理学

2018年度問題50です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

核医学物理学は基本的に国試と同等か少し難しいレベルだと思いますが、この問題のようにあまり馴染みのない内容が出題されることもあるようです。

コンプトンカメラの原理については長くなるので省略しますが、解答は以下のようになると思います。

a)光学的レンズは使用しない。

b)光子の飛来方向を推定できるため、物理コリメータを必要としない。

c)X線CT装置よりは空間分解能は低い。

d)ARM(Anglular Resolution Measure)は角度分解能の指標であり、コンプトンカメラに特有の空間分解能指標である。

e)正しい。

よってe)が正しいと考えられます。


放射線治療物理学

2018年度問題58です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

放射線治療物理学は確実に一番難しいと思います。

医学物理士の多くが治療分野に従事しているので当たり前と言えば当たり前かもしれません。

まだそこまで広く認知されていない概念なども出題されているような気がします。

この問題のTCPも国試では見たことがありませんし、授業でも聞いた覚えがありません(聞き逃しているだけかもしれませんが)。

知識のアップデートが最も必要になる科目だと思いました。

一番自信がありませんが、解答は以下のようになると思います。

a)正しい。

b)腫瘍に対して均一な線量を仮定する

c)通常分割照射の方が寡分割照射より大きい。

d)放射線治療後に細胞が全て死滅する場合,TCPは100%となるためその値は1である。

e)1回線量dの照射後における平均生存腫瘍細胞数Nは、

  N = N_0 e ^{-\alpha d - \beta d ^2}

で表される。

n回照射を行った場合、平均生存腫瘍細胞数Nは、

  N = N_0 e ^{-n(\alpha d + \beta d ^2)}

    = N_0 e ^{-nd(\alpha + \beta d)}

    = N_0 e ^{-\alpha D \left(1 + {\frac{d}{\alpha / \beta}} \right)}

で表される。

一般に腫瘍のα/βは大きい(10Gy程度)であるため、2Gyの分割照射では生存腫瘍細胞数はN_0 e ^{-\alpha D}で近似される。

よって解答はaになると考えられます。


放射線計測学

2017年問題65です。

(2017年度医学物理士認定試験より引用)

放射線計測学は全体的には解きやすいですが、度々専門的な問題が出題されているという感じでした。

この問題も見た時は「知るか!」と思いました笑

導出を書くと長くなるので省略しますが、解答は以下のようになると思います。

中心電極の半径がa、空洞内壁の半径がbである円筒形のガス入り計数管に電圧Vを印加したとき、空洞内で中心電極の表面から半径方向rの点での電界強度E(r)は、

 E(r) = {\frac{V}{r \ln (b/a)}}

で表される。

よって解答はeになります。


医療・画像情報学

2018年度問題71です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

医療・画像情報学は国試に出題されない内容が多く、新たに勉強する必要があると思います。

ネットワークやDICOM、人工知能などの問題も少し国試よりレベルが高いように感じました。

この問題もエントロピー(平均情報量)についての問題であり、情報理論で学ぶ概念です。

簡単にですが、解答は以下のようになると思います。

ある事象Eの生起確率をP(E)とするとき、その事象が起こったことを伝える情報量I(E)は、

 I(E) = -\log_2 P(E)

と表され、エントロピー(平均情報量)H(P)は、

 H(P) = \sum_{k=1} ^n \{ P(E_k) \times I(E_k) \}

で求められる。

排反する2つの事象をそれぞれE_1E_2とし、それぞれの生起確率をP_1P_2とすると、エントロピーH(P)は、

 H(P) = P(E_1) \times I(E_1) + P(E_2) \times I(E_2)

    =0.4 \times (-\log_2 0.4) + 0.6 \times (-\log_2 0.6)

    =0.4 \times 1.3 + 0.6 \times 0.7

    =0.94

となるため、解答はdになります。


放射線関連法規および勧告/医療倫理

2018年問題90です。

(2018年度医学物理士認定試験より引用)

放射線関連法規および勧告については国試と同レベルです。

医療倫理についても国試でもたびたび出題されているので、少し自分でまとめて勉強すれば大丈夫そうだと思いました。

この問題はハインリッヒの法則についての問題です。

今年の国試から出題基準に医療安全管理学が追加されたので、今後出題されるかもしれませんね。

解答は以下のようになります。

ハインリッヒの法則」とは1つの重大事故の背景には29の軽微な事故があり、さらにその背景には300のインシデント(事故に至らなかった事例)が存在するという統計的な経験則である。

よって解答はeになります。


どうでしょうか?

なかなかヤバイな…」と思いますよね笑

少し難しい問題や追加で勉強が必要だと思った問題を選んでいるので、問題全体を見ればもう少しやる気が起きるかもしれません。

私も実際に受けるか分かりませんが、結構勉強になることもあるので勉強はしてみようかなと思っています。

自分ではもう少し詳しい解説を作ったりしているのですが、今回は長くなりすぎないように簡単な解説のようなものも書いてみました。

少しでも参考になれば幸いです。

何か誤りなどありましたら、ぜひ教えてください!

ではまた!

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