国試の難問?④(第70回診療放射線技師国家試験午後8)
こんにちは!
今回取り扱う問題は第70回午後8です。
(第70回診療放射線技師国家試験より引用)
この問題は散乱線除去グリッドに関する問題です。
一見、典型的な問題で簡単に解けそうですが少し落とし穴があります。
まずは、グリッドの幾何学的特性・物理特性の基本について復習しましょう。
グリッドの特性
グリッドの特性として幾何学的特性と物理的特性があります。
幾何学的特性は
グリッド比
グリッド密度
物理的特性は
選択度
コントラスト改善度
露出倍数
イメージ改善係数
などがあります。
幾何学的特性
まずはグリッド比です。
グリッド比は以下のように定義されます。
なんとなくイメージできると思いますが、このグリッド比が高くなるほど斜入してくる散乱線は除去されやすくなります。
次はグリッド密度です。
グリッド密度は1cm当りのはくの数です。
普通に考えるとグリッド密度が高くなれば、そのまま散乱線除去能も高まりそうですが…。
まぁ、とりあえず物理的特性を復習しましょう。
物理的特性
物理的特性の前に一次放射線透過率、散乱放射線透過率、全放射線透過率の定義を示します。
物理的特性はこれらを用いて、
と定義されます。それぞれの意味は問題を解きながら理解することにします。
簡単な復習を終えたところで、問題を解いていきましょう!
問題の解説
私自身この問題を初めて解いたとき、消去法では解くことができましたが、正しい選択肢がなぜ合っているのか理解できませんでした。
まずは比較的理解しやすい1、3、5から吟味していきます。
1.管電圧が低いほど選択度は小さくなる。
1は管電圧が低い場合についての選択肢です。
低管電圧の場合、高管電圧の場合に比較して光子のエネルギーが低くなるので、入射方向に平行でない散乱X線の透過率は低くなると考えられます。
このため、選択度は大きくなります。
3.グリッド比が大きいほど選択度は小さくなる。
5.グリッド比が大きいほど露出倍数は小さくなる。
3、5はグリッド比が大きい場合についての選択肢です。
先ほど復習した通り、グリッド比が大きいほど散乱線の透過率は低下します。散乱X線透過率が低くなるにつれて、全X線透過率も低くなるので、選択度・露出倍数は大きくなります。
ここまでは多くの方が理解できたかと思います。
では少し厄介な2、4の選択肢を吟味しましょう。
2.グリッド密度が高いほど選択度は小さくなる。
4.グリッド密度が高いほど露出倍数は小さくなる。
2、4はともにグリッド密度が高い場合についての選択肢です。
先程の3つの選択肢は誤りだったので、この2つの選択肢は正しいはずですね。
感覚的にはグリッド密度が大きくなればなるほど散乱線の透過率は下がっていくような気がします。
しかし、これらの選択肢では選択度・露出倍数がともに小さくなると書かれています。
これは散乱X線透過率・全X線透過率が大きくなることを示しますよね?
あれ?なんでだろう??
これは変更させるファクター以外を固定するという前提の上で考えれば理解できるかと思います。
グリッド密度を高くする場合にはグリッド比を固定する必要があります。
この前提のもと考えると、どういうことが起きるでしょうか?
グリッド比を保ったままグリッド密度を高くするのでグリッドの高さは低くなってしまいます。
言い方を変えると、グリッドの厚さが薄くなってしまうということです。
図で示すと以下のようになります。
散乱線は何も鉛はく1枚で完全に吸収されるわけでなく、何枚かの鉛はくを通過する過程で止まるものです。
高さが低い場合、散乱線が通過する鉛はくの容積は少なく、その吸収(減弱)も小さいと考えられます。
これにより散乱線の透過率は高くなると考えられるので、散乱X線透過率および全X線透過率が高くなり、選択度および露出倍数は小さくなると考えられます。
理解できたでしょうか?
と、さも完全に理解しているように説明していますが、私自身少し理解があいまいです笑
これはあくまでも理想的な話で、実際のグリッドを使った場合に必ずこうなるというわけではないと思います。
私が使っていた教科書ではこれと真逆の数値が出ていたりしました笑
実際に実験できたらおもしろそうですけどね。
間違いなどありましたら、ご指摘お願いします。
ではまた!