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国試の難問?⑤(第71回診療放射線技師国家試験午後75)

こんにちは!

今日は第71回午後75を扱っていきます。

(第71回診療放射線技師国家試験より引用)

この問題は医用工学の共振回路に関する問題ですね。

共振回路の出題はよくありますが、この問題ではQ値(尖鋭度)の理解も必要であり、難問と言えるのではないかと思います。

基礎から説明していきますが、共振回路がだいたいわかっているという方はQ値の確認から見てください。

では、まず共振回路およびQ値についての基礎知識から確認していきましょう。


基礎知識の確認

共振回路について復習する前に、さらに基礎となるインピーダンスから軽く復習したいと思います。

インピーダンスとは

最も端的に言うと、インピーダンス電流に対する電圧の比です。

式で示すと、

 Z = {\frac{V}{I}}

と表せます。

抵抗だけを含んだ回路では、インピーダンスは抵抗と等しいですが、回路にコンデンサやコイルが入ることにより、少し複雑になります。

(この辺の詳細は近々別の記事で出そうと思っているので、そちらをご覧ください。)

とりあえず今回は式が分かっていると言う前提で話を進めます。

例えば、先程の問題の回路(直列RLC回路)の場合、

f:id:Yuru-yuru:20200217220827j:plain:w200

インピーダンスZは、

 Z = R + j(\omega L - {\frac{1}{\omega C}})

 R:抵抗、L:インダクタンス、Cキャパシタンス、\omega:角周波数

と表せます。

この式に含まれる角周波数(周波数)が共振回路では重要になります。

ここに注目しながら共振回路についても見ていきましょう。


共振回路とは

共振回路には直列RLC回路と並列RLC回路がありますが、今回の問題は直列RLC回路なので、そちらを対象として説明します。

さきほどのインピーダンスの式、

 Z = R + j(\omega L - {\frac{1}{\omega C}})

を見てみると、虚数の項(リアクタンス)には角周波数\omegaが含まれています。

この角周波数は電源の周波数fを用いて表すと、

 \omega = 2 \pi f

となります。

つまり、電源の周波数を変化させることでインピーダンスも変化するということです。

この周波数を変化させていったとき、インピーダンスが最小となったときを共振と呼びます。

少し注意してほしいのは先ほども言ったように、共振は直列回路と並列回路で意味が異なります。

今回は直列RLC回路についてのみ考えていくので、混同しないように注意しましょう!

では、インピーダンスが最小になるのは周波数がどのような値をとる場合でしょうか?


インピーダンスの式を見て考えると、周波数によって変化する部分はインピーダンス虚数部分であり、この虚数部分が0になる場合にインピーダンスが最小になると考えられます。

式で示すと、

 \omega L - {\frac{1}{\omega C}} = 0

となりますよね。

このとき、角周波数\omega_0は、

 \omega_0 L = {\frac{1}{\omega_0 C}}

  \omega_0 ^2 = {\frac{1}{LC}}

  \omega_0 = {\frac{1}{\sqrt{LC}}}

となり、これを共振角周波数といいます。

さきほどと同じように電源の周波数を用いて示すと、

 2 \pi f_0 = {\frac{1}{\sqrt{LC}}}

  f_0 = {\frac{1}{2 \pi \sqrt{LC}}}

となり、共振周波数と呼びます。

共振回路についてはこの程度で大丈夫です。

続いてQ値について見ていきます。


Q値(尖鋭度)とは

Q値(尖鋭度)とは名前の通り、尖(とが)り具合を示すものです。

この尖り具合は、直列共振曲線、今回の場合で言うとインピーダンスの曲線の尖り具合のことです。

直列共振回路におけるQ値には2通りの定義があります。

定義①は角周波数(周波数)を用いた定義です。

この定義は以下の図において、

f:id:Yuru-yuru:20200217221000j:plain:w300

 Q = {\frac{\omega_0}{\omega_2 - \omega_1}}

と定義されます。

なんとなく尖っているほど大きくなる値であることが分かると思います。


定義②は抵抗(インピーダンスの実数成分)リアクタンス(インピーダンス虚数成分)による定義です。

これは、

 Q = {\frac{\omega_0 L}{R}}

と定義されています。

イメージとしては、リアクタンスに対して抵抗が小さい方が共振時のインピーダンスがより小さくなるため直列共振曲線がより尖った形になると考えればよいと思います。

(細かい導出過程はまた今度出そうかと思います。)

また、先程の共振角周波数の式から、

 Q = {\frac{\frac{1}{\sqrt{LC}} \times L}{R}} = {\frac{1}{R}} \sqrt{\frac{L}{C}}

とも変形できます。

このQ値も先程の共振回路と同様、直列回路と並列回路で異なるので注意してください。

基礎知識の確認が終わったところで、問題を解いていきましょう!


問題の解説

まずは、共振の性質から考えていきます。

先程復習した通り、問題の回路は直列RLC回路なので、インピーダンスZは、

 Z = R + j(\omega L - {\frac{1}{\omega C}})

となり、共振時はインピーダンスが最小になるため、インピーダンスは抵抗と等しくなります。

つまり、抵抗を求めるためにはグラフからインピーダンスの最小値を読み取れば良いことになります!

グラフから読み取るとR=0.2 kΩと分かります。

このインピーダンスが最小となる時の周波数は共振周波数です。

共振周波数は

 f_0 = {\frac{1}{2 \pi {\sqrt{LC}}}} = 2 \times 10 ^3

で求められるため、「あぁこれでLとCがわかる!」と喜びたいとこですが、これでわかるのはLとCの積だけです。

選択肢を見てみるとR=0.2 kΩの選択肢1と2では、LとCの値はそれぞれ逆になっており、積は一定です。

つまり、この時点では区別がつきません!

このため、先ほど復習したQ値が必要になってきます。

まずは定義①から読み取ります。

先程の定義では流れる電流が1/√2倍になる時の周波数が必要でしたが、今回はインピーダンスのグラフなのでインピーダンスが√2倍になる周波数が必要となります。

f:id:Yuru-yuru:20200217221107j:plain

これは最初に確認した、

 Z = {\frac{V}{I}}

より理解できると思います。

インピーダンスが√2倍(約0.28 kΩ)となる周波数をグラフからそれぞれ読み取ると、

f:id:Yuru-yuru:20200217220758j:plain:w400

 f_1 = 1400[Hz]

 f_2 = 2700[Hz]

と求まります。

(かなり目分量ですが、計算結果は少しずれても大丈夫なので問題ありません)

これよりQ値は、

 Q = {\frac{\omega_0}{\omega_2 - \omega_1}} = {\frac{f_0}{f_2 - f_1}} = {\frac{2000}{2700 - 1400}} \simeq 1.54

と求まりました。

では、次に定義②から

 Q = {\frac{\omega_0 L}{R}}

で求められるため、

 L = {\frac{Q \times R}{\omega_0}} = {\frac{1.54 \times 2\times 10 ^2}{2 \pi \times 2 \times 10 ^3}} = 2.45 \times 10 ^{-2}

となります。

少し数値はズレましたが約25 mHと求まり、正解はとなります。

Cも求めるのであれば、

 Q = {\frac{1}{R} {\sqrt{\frac{L}{C}}}}

から求められるので、確かめてみてもいいかもしれません。


どうでしょうか?かなり時間のかかる問題だったと思います。

正直目盛りを読み取るのもかなり目分量ですし、計算工程がちょっと長いので国試の問題として良いかと言われると微妙ですが、1問でいろいろなことを復習できるので解いてみる価値はあると思います。

他にもっと簡単な解き方があるという方はぜひ教えてください!

ではまた!