「高電圧発生装置」を理解する①
こんにちは!
今回からX線高電圧発生装置について数回に分けてまとめていきます!
X線高電圧発生装置ではちょっと名前が長いので、この後から高電圧装置と呼びます。
高電圧装置をしっかりと理解するためには電気工学の知識が必要になります。
私が授業で高電圧装置について習ったときは、まだ電気工学の授業が終わっておらず、なんだかよく分からないというままスルーしていました。
正直、高電圧装置を理解できているからどうなんだという感じかもしれませんが、よく分からず気になっている人はぜひご覧ください。
今回は高電圧装置の概要と、単相2ピーク形装置についてまとめます。
1.高電圧発生装置の概要
さて、高電圧装置の目的は何でしょうか?
もちろん、高電圧により電子を加速し、ターゲットに衝突させ、X線を発生させることですよね。
(ここから怪しい人は一度復習してから読んでもらえると良いと思います。)
この高電圧の供給についていくつかのポイントがあります。
このポイントを念頭に置いておくことで、理解が深まると思うので、簡単に説明します。
1-1 電源電圧の変圧
大体一般撮影の場合、管電圧は数十kV、高管電圧撮影を行う胸部でも120kV程度です。
いくら大きな病院であってもそのまま加速電圧として使用できる程の高電圧が直接送電されることはありません。
特別高圧と呼ばれるものでも6600V程度です。
つまり、数十〜120kV程度の電圧を供給するためには変圧器を用いて電源電圧を昇圧する必要があります。
変圧器の仕組みを理解している方には当たり前だと思われますが、直流では変圧できません!
電圧の向きが交互に変わらなければ、2次側で電磁誘導が生じなくなってしまうんですね。
今回は原理まで言及しませんが、このことは後で出てくるので覚えておいてください!
1-2 整流回路
X線管に供給される電圧は、我々が普段使用する電源と同じく交流電圧です。
しかし、そのまま使用すると半周期分しか有効に使うことができません。
自己整流型装置と呼ばれるものはこの半周期のみを使用しますが、普通に考えて効率が悪いですよね。
このため、高電圧発生装置には整流回路が含まれます。
仕組みは省略しますが、負の電圧が印加される半周期を正方向に電圧がかかるようにうまく回路をつくります。
負の電圧波形が正の電圧に折り返るようなイメージを持っていれば良いと思います。
1-3 電圧供給の安定性
これが様々な種類の高電圧装置を理解する上で最も重要となるポイントです。
高電圧装置はこの電圧供給の安定性を高めるために進化してきたと考えて良いです。
単相2ピークから三相6ピーク、三相12ピーク、そしてインバータ装置と徐々に電圧の供給の安定性が高くなっています。
電圧の安定性を示す指標としてリプル百分率というものがあります。
このリプル百分率は以下のような式で示されます。
最大電圧に対する最大電圧と最小電圧の差の比となるため、電圧の上下が小さく安定している方が小さくなる値です。
理想的にはリプル百分率がほぼ0%、つまり直流を目指したいところですね。
しかし、先ほど説明したように変圧を行うためには交流である必要があります。
さらに直流電圧の送電は様々な問題からあまり行われていません。
このため、どうにかして交流を使用しながらリプル百分率を下げることを目標とすることになります。
なんとなくイメージが掴めたでしょうか?
では、まず単相2ピーク形装置についてみていきましょう。
2.単相2ピーク形装置の原理
単相2ピーク形装置は非常に単純です。
効率をあげるために、交流電源に対して整流を行うだけです。
図で示すと以下のようになります。
単相(電源が1つ)で1周期に2つのピーク(山)ができているため、単相2ピーク形と呼ばれます。
名前も単純ですね。
この整流により、効率は良くなったものの電圧の安定性という面ではどうでしょうか?
1周期の中で最大電圧と0Vを繰り返すような電圧は安定していると言えるでしょうか。
このような電圧が供給されると、発生するX線の線質にもばらつきが多くなってしまいます。
では、安定性をあげるためにどうするか。
ここで三相交流の登場です。
三相交流を用いた装置については次回書きたいと思います。
ぜひ続けて読んでみてください。
ではまた!