ゆるゆる独学

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「高電圧発生装置」を理解する②

こんにちは!

前回の予告通り、今回は三相交流を用いた高電圧発生装置について書いていきます!

この辺から訳が分からなくなる人が増えてくると思います。

実際の高電圧発生装置の原理に行く前に、基本的な電気工学の知識を確認したいと思います。


1.基礎知識の確認

基礎知識と言ってもなかなかハードなので、少し丁寧に説明していきます。


1-1 三相交流とは

そもそも三相交流とは何なのかというところから確認していきます。

前回学んだ単相2ピーク形装置は単相、すなわち電源を1つだけ使用するものでしたよね。

これと同様に三相交流電源を3つ使用するものです。

(電源という言い方をすると少し誤解が生まれそうですが、今回はこれでいきます)

しかし、ただ3つの電源から電圧を供給するのではなく、位相の異なる3つの電源を使用します。

位相が異なるとは交流電圧が時間的にずれているということを意味します。

図で示すと以下のようになります。

f:id:Yuru-yuru:20200307174631j:plain:w300

図を見てわかるように、各交流波形は位相が2/3πずつずれています。

一応、bはaより2/3π遅れ、cはさらに2/3π遅れとしていますが、aとcの位相差はπを超えているので2/3π進みともとらえられます。

そんなことはともかく、この三相交流を用いることで、より効率的に電力を供給することができます。

後程必要となるのでベクトル図も説明しておきます。

各電源は位相が2/3πずれているので、ベクトルで示すと、

f:id:Yuru-yuru:20200307174742j:plain:w200

となります。

では、続いて三相交流で用いられるΔ結線、Y結線についてまとめていきます。


1-2 Δ結線、Y結線とは

Δ(デルタ)結線Y(スター)結線三相交流を使用する際の結線方式です。

f:id:Yuru-yuru:20200307183659j:plain:w300

それぞれ回路の形からΔ結線、Y結線と名づけられています。

三相交流を用いる場合、電源と負荷または変圧器などでΔ結線とY結線を組み合わせて使用します。

f:id:Yuru-yuru:20200307183724j:plain

Δ-Y結線Y-Δ結線といった感じですね。

細かい話はいろいろあるのですが、今回はこれらの位相の差に着目して説明していきます。

まず、Δ結線とY結線それぞれの三相交流電源を考えます(二次側は両方Δ結線)。

f:id:Yuru-yuru:20200307183129j:plain

Eで示したものを相電圧、Vで示したものを線間電圧と呼びます。

ここで一つ違いが生まれます。

Δ結線の方は各負荷にかかる電圧は電源1つから電圧の供給を受けているのに対し、Y結線は2つの電源から電圧の供給を受けています。

負荷にかかる電圧はΔ結線では相電圧と等しく、Y結線では線間電圧になります。

各負荷にかかる電圧が結線方式によって異なることということです。

では、その大きさおよび位相はどうなっているでしょうか?

ここで、先程のベクトル図が役に立ちます。

Δ結線の場合、電源と同じ大きさ、同じ位相の電圧(相電圧)がかかることになります。

Y結線の場合、負荷にかかるのは線間電圧になるため、各電圧は

 V_{ab} = a - b ・・・①

 V_{bc} = b - c ・・・②

 V_{ca} = c - a ・・・③

となります。

重要なのはこれらの電源をベクトルとしてみることです。

このため、ベクトル図では以下のようになります。

f:id:Yuru-yuru:20200307174925j:plain

ベクトル図を見てわかるように、各電源と位相がπ/6ずれています。

さらに計算すればわかるのですが、大きさも√3倍になっています。

このことは三相12ピーク形装置を理解するうえで重要となるので理解して覚えておきましょう。


いかがでしょうか?

少し難しいかもしれませんが重要なポイントは、

 三相交流は位相の異なる3つの電源を用いる

 ②Δ結線とY結線ではπ/6の位相差が生まれる

という2点です。

なんだかもやもやするという方はネットで知らべればもっと丁寧な説明があると思うので、そちらをご覧ください。

では、高電圧装置に戻りましょう!


2.三相6ピーク形装置

三相6ピーク形装置は比較的簡単に理解できると思います。

先程の三相交流の波形を思い出してください。

f:id:Yuru-yuru:20200307174631j:plain:w300

前回の単相2ピーク形を同様に、負の半周期を使用できないのでは効率が悪いですよね。

このため、整流回路が必要となります。

単相に比べて回路は複雑になりますが、波形は同じように負の波形を正に折り返すと考えればよいです。

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こんな感じになります。

ここで少しポイントがあるのですが、これらの電圧は先ほどのように3つの負荷に別々にかかるわけではなく、これらの合成電圧X線管にかかります。

このため、最終的な電圧波形は以下のようになります。

f:id:Yuru-yuru:20200307175200j:plain

図を見てわかるように電源が3つ(三相)で1周期に6つのピーク(山)ができているため、三相6ピーク形と呼ばれます。

単相2ピークの波形に比べてかなり平坦になっているのではないでしょうか。

この時点でリプル百分率は約13.4%になっています。

では、これを応用した三相12ピーク形装置について見ていきましょう。


3.三相12ピーク形装置

三相6ピーク形装置は割と簡単に理解できたかと思いますが、三相12ピーク形はなかなかややこしくなります。

頑張って理解しましょう!

3-1 変圧

前回の記事で説明した通り、高電圧発生装置には変圧が必要です。

三相交流でも同じように変圧が行われますが、ここで先程説明したΔ結線、Y結線が出てきます。

変圧器の1次側と2次側をΔ-Δ結線とした場合、2次側には同じ位相で大きさが異なる電圧が生じます。

では、Δ-Y結線にした場合はどうでしょう。

先程確認したように、Δ結線とY結線の出力電圧の位相はπ/6ずれています!

三相12ピーク形装置では2次側にΔ結線とY結線の2つを設置し、計6つの異なる位相の電圧を使用します。

ベクトル図で示すと以下のようになります。

f:id:Yuru-yuru:20200307175727j:plain:w200

波形で示すとこのような感じです。

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ベクトル図に従うとY結線の方が電圧が高くなってしまうじゃないかと思うかもしれませんが、変圧比をうまく調整すれば同じ出力電圧を得ることは簡単だと思います。(あくまで私の予測です)

理解できたでしょうか?

ここを理解できればあと少しです!


3-2 整流

ここからは今までと同様です。

整流回路に通してやればいいだけです。

整流回路に通すと、

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このようになります。

かなりゴチャゴチャしていて何が何だかわかりませんが、これらを合成します。

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もう説明はいらないと思いますが、電源が3つ(三相)で1周期にピークが12個あるので三相12ピーク形と呼ばれます。

ここまでくるとリプル百分率は約3.4%とかなり小さくなってきます。


4.まとめ

少々ややこしかったと思いますが、三相交流を用いた高電圧装置について書いてみました。

これだけ電気工学の知識が必要な事柄をただ「こういうのがありますよー」と言われてもピンと来ないのは当たり前だと思います。

一度理解してしまえば、簡単なので納得するまで読んでみてください。

次回はついにインバータ装置についてまとめていきます。

何か誤りなどありましたら教えてください!

ではまた!