医用工学特講 第7回:電圧・電流の進み、遅れとは?(2)
こんにちは!
今回は前回の予告通り、第66回午後53を解いていきます。
前回の記事を読んでいない人は一読をおすすめします。
まずはポイントの確認から始めましょう!
ポイントの確認
消費電力とは
問題の図には電圧と電流の波形が描かれており、ここから消費電力を求めろと言われています。
この問題を解くには、そもそも消費電力とは何か理解している必要があります。
消費電力[W]は別名有効電力と呼ばれるものであり、負荷(抵抗)で消費される電力です。
消費電力とか有効電力とか言われるのは、送られてきている電力(皮相電力)の中で実際に電化製品や蛍光灯などで消費されている(使われている)電力だからです。
では、送られてくる電力のうち、どのくらいが消費電力となるのでしょうか。
ここで、前回のベクトル図を思い出します。
図に示したように抵抗の電圧は以下のように計算できます。
このため、負荷(抵抗)で消費される電力P[W]は、
このは力率と呼ばれるものです。
送る電力が一定ならば、この力率を高めるほど有効に消費される電力が多くなるので、できるだけ高くしたい値ですよね。
ちなみに縦軸(虚軸)の成分は無効電力[var]、有効電力と無効電力の合成は皮相電力[kVA]と呼ばれ送られてくる電力を示します。
単位がそれぞれ異なるので覚えておくとよいと思います。
もう少しポイントがあるので続けて説明していきます。
実効値?平均値?最大値?
電圧や電流の値を示す際、いくつかの示し方があります。
管電圧は最大値、管電流は平均値、二次電圧・電流は実効値などとばらばらに定められており、混乱してしまいますよね。
では、今回の消費電力を求める際の電圧、電流の値はどれを用いればいいのでしょうか。
交流の場合、電圧も電流も時間的に変化するため、瞬時値で示す意味が薄いことはわかると思います。
必要となるのは電力を直流に換算したらどの程度になるのかではないでしょうか。
この場合に用いるものが実効値です!
直流の場合、電力Pは
と表せます。
交流の場合、電力Pは平均値で、
となるため、
という風に考えられ、これは2乗の平均値である実効値と等しくなります。
少々雑な説明ですが、とりあえず実効値を使えばいいことが分かっていただければ良いです。
ポイントの確認は以上です。問題を解いていきましょう!
問題演習
先程のポイントの確認から、
・電圧・電流は実効値を使用
・位相のずれから力率を求められる
の2つが分かったと思うので、これらを使っていきます。
まずは、 電圧・電流の実効値 を求めましょう。
実効値は、
で求められるため、図から読み取って計算すると、
となりますね。
次に、電圧と電流の位相差から 力率 を求めます。
図を見ると、電圧と電流の位相差はπ/3と読み取れます。
ここから力率cosθは、
と求まります。
では最後に電力を求めましょう。
電力は以下の式で求められます。
[W]
よって解答は1になります。
ポイントがいくつかあるので、少し迷う問題だったと思います。
位相の進み・遅れを理解しておくだけでも解ける問題は増えると思います。
何か誤りなどありましたらご指摘ください。
ではまた!